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PET樹脂容器の温室ガス可視化、岩谷産業がデータ実証

PET樹脂容器の温室ガス可視化、岩谷産業がデータ実証

※イメージ

カーボンフットプリント活用

岩谷産業は温室効果ガス(GHG)排出量の算定・可視化サービスを手がけるゼロボード(東京都港区)と組み、カーボンフットプリント(CFP)のデータ連携実証事業を始める。期間は2024年1月から1年間。ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂メーカーが提供するCFPデータを連携。現場の実情を反映しやすい仕組みを作ることで、サプライチェーン(供給網)全体でのGHG排出量の可視化を目指している。(大阪・園尾雅之)

CFPのデータ連携

CFPとは原材料調達から生産、流通、廃棄・リサイクルまでの全工程で排出されるGHGの量のこと。23年夏、ゼロボードを主幹事とするプロジェクトが、日本貿易振興機構(ジェトロ)の「デジタル技術を活用したサプライチェーンの高度化支援事業」に採択された。その具体的な取り組みが始まる。

岩谷産業はPET樹脂を、タイのインドラマ・ベンチャーズから仕入れ、日本で販売している。今回、インドラマが自社で算定したCFPデータを取得し、ゼロボードのシステムを通じてデータ連携する。実証を踏まえ24年中に、飲料メーカーや食品メーカーなど、スコープ3(自社以外)も含めた供給網全体の削減目標を掲げる川下企業に対し、同データを提供する計画だ。

現在、供給網全体での算定にあたっては、業界標準値(原単位)を基にする。そのため、供給網を構成する各企業が実際に算定する数値と乖離(かいり)が出てしまうという。今回の仕組みを使えば、より実情にあったデータを反映しやすくなる。

ゼロボード事業開発本部スペシャリティ事業部の片山賢部長は、「サプライヤーが(太陽光設置などの)努力をしても、原単位が同じであれば、排出量は同じ値になってしまう。それを変えたい」と訴える。

将来的には、供給網全体で排出量を可視化するシステムを構想する。ただそれに向けては技術的なハードルが多いという。実証で課題を洗い出し、取り組みを加速する考えだ。

日刊工業新聞 2023年12月28日

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