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レゾナックHD・JSRは最終赤字…需要減速「半導体材料」、競争力維持へ再編議論

2022年半ば頃からみられた半導体市場の変調は、化学メーカーの事業環境を一変させた。在庫調整局面が想定以上に長期化し、幅広い機能材料が出荷調整を余儀なくされた。各社は市場減速下でも中長期的な半導体需要の伸長を見据えており、関連事業への積極的な投資を継続。また経済安全保障の観点から半導体の重要性が再認識され、日系企業が高いシェアを持つ材料分野の競争力をどう維持するかが改めて問われている。

半導体用シリコンウエハーの出荷面積

「米中対立など地政学的リスクが事業環境の予見を困難にしている」―。前工程向け材料を手がける化学メーカーの首脳は、直近の業績低迷を受けてかじ取りの難しさをこう吐露した。サプライチェーン(供給網)の川上に位置する化学メーカーにとって、工場操業や価格交渉など需要予測の精度が競争力に結び付く場面は少なくない。足元は底打ち感がみられるものの、23年は多くのデバイスの需要が低迷。在庫調整は川上の材料まで波及し、地政学的要因が供給網上のリスクをより不透明にした。

直近の決算では、レゾナック・ホールディングスやJSRといった材料大手が最終赤字を計上。日産化学は連続10年の最高益更新が途絶える見込みで、今回の調整局面への対応の難しさが浮き彫りになった。それでも各社は投資を緩めることなく、人工知能(AI)の普及など成長機会の取り込みを狙う。

6月には、JSRが政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)による買収で合意し非上場化を決めた。同社はフォトレジストでシェア首位級。単一株主の下で積極的な投資を実行しやすくするほか、業界再編を主導して産業競争力の強化を図る。エリック・ジョンソン最高経営責任者(CEO)は「プレーヤーが多く、重複する投資を行っている」と材料業界の課題を指摘する。先端半導体は製造工程が複雑化し、材料開発の投資負担増が見込まれ効率化が課題だ。同社の決断や再編の動きが、半導体材料の競争力にどう影響するか注目される。


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日刊工業新聞 2023年12月5日

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