レゾナックHDは営業赤字が改善…半導体材料に回復の兆し、今後の見通しは?
半導体の後工程向け材料の需要に復調の兆しが見えてきた。レゾナック・ホールディングス(HD)は、4―6月期の同材料の販売数量が1―3月期比で改善。半導体封止材で世界シェア約4割の住友ベークライトも、関連事業の4―6月期の売上収益が3四半期ぶりに200億円を超えた。半導体市場の在庫調整局面が長引く中、各社は後工程用材料の需要が1―3月を底に緩やかな回復に転じたとみており、一層の収益改善に期待をかける。(山岸渉、大川諒介)
生成AI・車載関連需要増
ウエハーから半導体を切り分けてチップにする半導体製造の後工程向け材料で最大手のレゾナックHD。同社の染宮秀樹取締役常務執行役員最高財務責任者(CFO)は、足元の市場環境が「5月想定から変わってきている」と話す。1―6月期の半導体・電子材料事業は、顧客の生産調整などで131億円の営業赤字(前年同期は273億円の黒字)に転落。ただ、1―6月期に同事業で200億円の赤字を見込んだ5月予想から69億円改善した。
要因の一つは封止材やダイボンディング材料など後工程用材料の復調だ。染宮CFOは「4―6期月以降、着実に回復している」とし、「生成人工知能(AI)関連で需要が伸びている製品もあり、7月以降は回復が進む」と見通す。
住友ベークライトは、封止材を中心とする半導体関連材料事業の4―6月期の売上収益が202億円(事業利益は42億円)と、1―3月期から12・2%増加した。平井俊也取締役常務執行役員は「封止材需要は底打ちし、緩やかに回復している」とみる。封止材は4―6月期の販売数量が1―3月期比で約10%増加した。堅調な車載半導体向けに加え、「中国や台湾などで民生向けの回復がはっきりしてきた」(平井取締役常務執行役員)とし、今後はさらなる販売増を見込む。
需要回復への期待は、川下の半導体後工程請負業(OSAT)も同様だ。米大手アムコー・テクノロジー(アリゾナ州)は7―9月期の売上高が4―6月期比21・7%増の17億7500万ドル(約2574億円)になると予想。スマートフォンの次世代モデル投入効果のほか、先進運転支援システム(ADAS)など車載半導体需要の継続を織り込む。
ウエハー、在庫調整続く 前工程向けは反転に時間
今後の焦点は川上のウエハーや、ウエハーに回路を形成する前工程用材料の需要回復時期。シリコンウエハー大手SUMCOの橋本真幸会長兼最高経営責任者(CEO)は、足元の在庫調整局面について「これまでと様相が異なる」と指摘する。同社は足元の直径300ミリメートル(12インチ)ウエハーの顧客在庫が14年以降で前例のないほどに積み上がっていると推測。ウエハー需要について「23年後半から24年にかけて、きつい状況が続く」(橋本会長兼CEO)と警戒する。信越化学工業は「ウエハー需要はデバイスより遅れて在庫調整に入った。調整の終了はマクロ経済の動向による」(轟正彦取締役専務執行役員)と推測。
フォトレジスト大手のJSRは「4―6月期は予想以上に需要が落ち込んだ。7―9月期以降の回復を見込むが、当面は力強さに欠ける状況は続く」(江本賢一取締役)と見通す。住友化学の佐々木啓吾常務執行役員は「23年度下半期(10月―24年3月)から24年度にかけて回復していくのではないか」とみる。
また半導体の中でも、比較的回復が早いとされるロジック向け材料については「顧客の調整度合いに強弱がある」(SUMCOの橋本会長兼CEO)。市場の回復局面では、取引先の状況によっても材料メーカーの業績に差がみられそうだ。
世界半導体市場統計(WSTS)は23年の世界半導体市場規模を22年比10・3%減の5150億9500万ドルと、4年ぶりのマイナス成長を見込む。24年は5759億9700万ドル規模に再び拡大すると予想する。
半導体市場が調整局面に入り、材料メーカーは例外なく市況低迷の影響を受けた。中長期的な成長が見込まれる一方、足元のデバイス在庫調整は長引き、依然として不透明感が漂う。各社は情報収集に注力し出荷調整などの対応を進めるとともに、先端分野を見据えた技術開発にも取り組み、需要回復局面の「反転攻勢」に備える。
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