新薬開発に低分子RNA、東大発スタートアップが事業化する技術とは?
ANRis(アンリス、東京都新宿区、丹羽大介最高経営責任者〈CEO〉)は低分子のリボ核酸(RNA)を使った新規の核酸医薬の開発につながる技術を事業化する。大学発スタートアップを支援する早稲田大学ベンチャーズ(WUV、同新宿区)から2億円の投資を受けた。患者の症状に合った治療薬を選ぶことができ、副作用が少ない治療を提供できると期待される。
アンリスは東京大学の程久美子准教授らの成果である、一つの塩基変異を含むRNAの働きだけを抑制できる「SNPD siRNA」を基に起業。製薬会社と連携し、がんや遺伝性疾患を対象とした自社創薬パイプライン(新薬候補物質)と創薬プラットフォームを構築する。
低分子のRNAである「siRNA」を使った核酸医薬は肝疾患などの生活習慣病や感染症の一部に適用した治療薬が開発されている。だが原因となる遺伝子だけでなく正常な遺伝子の働きも抑制してしまうのが課題。SNPD siRNAを使うと疾患の原因となる遺伝子の働きだけを抑えるため、副作用などが少ない治療につながる。現在は患者の遺伝子配列をすぐに調べられるため、その結果を基に原因となる遺伝子を見つけて患者の症状に合った治療薬を処置できる「個別化医療」にもつながる。
程教授らは同技術を使った膵臓(すいぞう)がんの治療薬を開発中。主な原因であり創薬が難しいKRAS遺伝子に注目して核酸医薬を作り、細胞実験やマウス実験で有効性を確認した。がんだけでなく、遺伝性疾患やアルツハイマー病などの神経系疾患などへの応用も視野に入れる。今後は「薬物送達システム(DDS)」を組み込みより効果の高い治療方法の確立を目指す。
日刊工業新聞 2023年11月28日