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ナイロン高速混繊…「炭素繊維糸」を低コスト化する新技術

カワボウテキスチャードが事業化へ
ナイロン高速混繊…「炭素繊維糸」を低コスト化する新技術

生産効率を高めた炭素・ナイロン混繊糸

カワボウテキスチャード(岐阜県羽島市、川島和之社長)は、炭素とナイロンの長繊維同士を毎分60メートルと従来の数倍の高速で混ぜ合わせ、1本の糸にする技術を確立した。生地に織ることで、成形やリサイクルが容易な熱可塑性の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を低コストで生産できる。12月中に本社工場に専用加工機を導入し、受注活動を本格化し早期事業化を図る。

カワボウテキスチャードは自動車シートやインテリア、アパレル向けに、化学繊維の糸加工や織物・ニットの製造を主力とする。切れ目がない長繊維同士をエアの風圧でいったんほぐし、1本の糸にするポリエステルの混繊も得意としている。同社は新技術の確立に当たり、従来製品で蓄積した技術を応用。炭素とナイロンの混繊を高速化した。

新技術で生産した糸は、「CF―PA混繊糸」として訴求する。共同研究する岐阜大学工学部の仲井朝美教授の研究室で性能を検証し、CFRPの中間材料として実用にかなう最大耐荷重33キロニュートン、引っ張り強度2ギガパスカル(ギガは10億)を確認した。

これまでのノウハウを盛り込み、最適な加工条件を維持できる特注のエア加工機を導入して量産体制を整える。29日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開幕する展示会「先端材料技術展」で初披露し、営業活動も本格化する。

CFRPは炭素繊維生地に熱硬化性樹脂を含浸させる製法が主流だが、成形に時間がかかりリサイクルも難しかった。一方、熱可塑性樹脂は粘性が高く炭素繊維生地への含浸に不向き。炭素とナイロンの混繊糸は生産速度に課題があり高価だった。同社はCFRPの用途を広げる新製品として普及に努める。


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日刊工業新聞 2023年11月28日

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