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コロナ禍に需要激減「ハンドドライヤー」…三菱電機・TOTO・パナソニックが盛り返しへ投入、新製品の訴求力

コロナ禍に需要激減「ハンドドライヤー」…三菱電機・TOTO・パナソニックが盛り返しへ投入、新製品の訴求力

三菱電機のハンドドライヤー「ジェットタオル スリムタイプ衛生強化モデル」

新型コロナウイルス感染症拡大に伴い「飛沫をまき散らす」との懸念から多くの施設で使用が中止されたハンドドライヤー。5月の同感染症の「5類移行」を契機に、利用再開の動きが加速し需要が回復してきた。コロナ禍を経て「清潔感」をより一層重視する人が増えたことは、非接触で手を乾燥できるハンドドライヤーには追い風だ。メーカー各社は新製品の投入や提案方法の工夫で、需要喚起を図る。(編集委員・安藤光恵、田中薫)

「5類移行」機に利用再開拡大 メーカー各社、新製品投入

国内の多くのハンドドライヤーが止まったきっかけは、政府が2020年5月にオフィスと製造事業場を対象に定めた「新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」。ここにハンドドライヤーの「利用停止」が盛り込まれた。

コロナ禍以前の19年までハンドドライヤーの販売は順調に伸びていた。都市部の再開発や東京オリンピック・パラリンピックのインバウンド(訪日外国人)需要を見据えたビルやホテル、商業施設などの建設・改修が相次ぐ中で、「(非住宅分野の)新築物件のほぼすべてで、ハンドドライヤーが設置される状況」(TOTO販売統括本部商品営業推進部パブリック商品営業グループの蛭川順子氏)だった。

また国連の持続可能な開発目標(SDGs)への意識の高まりなどで「使い捨てタオルより環境に良いとの認識が広がり、需要が拡大していた」(パナソニック空質空調社設備IAQ推進室の林英樹室長)との指摘もある。

コロナ禍でもその収束後を見据え、非住宅の新築物件ではハンドドライヤーの設置は続いていた。ただ故障に気が付かれず放置されたり、取り換えが延期されたりして改修向けの販売は減小した。「需要は半分以下に落ち込んだ」(林室長)という。

新型コロナウイルス感染予防対策ガイドラインでは21年5月、管理の行き届いた施設のトイレでは感染リスクは大きくないとの判断から、定期的な清掃を求めつつ利用停止の記述が削除され、22年6月には関連項目が完全に削除された。それでも機器メンテナンスや清掃の負担が増えるとして運転が停止されたままのケースも多かったという。

潮目が変わったのが、23年5月の5類移行だ。3年間の「無風状態」からようやく抜け出し、製品の取り換えの動きも出てきた。需要はコロナ禍前の水準までは戻っていないが、コロナ禍の時期と比べると約2倍まで拡大した。今後、メーカー各社は「(コロナ禍前を超える水準にまで)需要をどう増やすか」(三菱電機の尋木保行上席執行役員)という課題に挑む。

飛沫の飛散抑え安心感 手洗い・アルコール消毒のニーズ追い風

コロナ禍を経て、ハンドドライヤー需要を喚起するためのキーワードとして存在感を高めるのが「清潔感」。コロナ禍当初、ハンドドライヤーは風で水滴が飛ぶことで菌やウイルスが飛散するのではないかという不安感から運転停止になったが元々、非接触で手を乾燥できる利点がある。また手洗い後に使う人が増えれば、手からの水滴が扉の取っ手や床を濡らす事態を減らせる。

内閣府が4月に公表した「第6回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」では、「5類移行後における行動変容の継続希望」に関する質問で「手洗いやアルコール消毒等の衛生管理」について「増やしたい、新たに取り入れたい」「引き続き継続したい」との回答は計85・9%に達した。手を洗い、清潔に乾燥させたいという需要は高まった。

こうした追い風を受け、三菱電機は清潔感を追求した製品を投入した。21年6月に発売した「ジェットタオル スリムタイプ衛生強化モデル」で、設置空間の空気を24時間循環清浄してウイルスや菌を抑制する「ヘルスエアー機能」が特徴だ。さらにアンモニアのガス濃度を自然減衰より58%減少させ、臭気を抑制。筐体(きょうたい)などの素材には幅広い微生物に対する生育抑止効果を持つ抗ウイルス加工樹脂を採用した。再循環流を発生させて吹き返しを抑える2段ノズル構造で水滴の飛散も抑制する。

製品投入後、順調に更新需要を獲得しているという。また設置面積を取らないスリムタイプとしたことで「従来、ハンドドライヤーを設置していなかった小規模の店舗も開拓できている」(尋木上席執行役員)。

同社は手洗い後にハンドドライヤーを使って手の残水量を減らすことで、その後のアルコールによる手消毒効果を高められる点なども訴える。また23年は「ジェットタオル」シリーズ発売の30周年に当たり、アピールを積極化した。

TOTOは動線を重視した設計で、トイレ利用者が手洗いから乾燥までの流れを一連の動作で完結できるようにする

TOTOも1月に水滴飛散を従来品の約3分の1に抑えた吸引式ハンドドライヤー「クリーンドライ(吸引・高速両面タイプ)」を投入した。吸引した空気はフィルターで浄化し、清潔な乾燥風として循環させる。ペーパータオル使用に比べての経済性でのメリットも訴求していく。

22―23年に相次いで投入した公共トイレ向けの洗面カウンターや自動水栓などとハンドドライヤーとで意匠性・大きさをそろえた。手洗いから乾燥を使用するまでの動線をシンプルにし、清潔な状態を長く保てるようにする狙いだ。ハンドドライヤーのみ他社製品が採用される事態を防ぐのも目的。トイレ全体を意識した製品提案を行い、拡販を図る。

パナソニックのハンドドライヤーの高級機種「パワードライクイック」。両面から振動のある気流を吹き付ける

一方、パナソニックはコロナ禍を受けても大きく製品は変化していないという。除菌機能を持つ製品を別途展開していることから、機能面でハンドドライヤーと混同されないように気を配る。ただハンドドライヤーに関し「水滴を飛ばさず、本体も抗菌処理しており(清潔感に関し)不安を持つ必要はない」(林室長)点は強調する。

若者を中心にハンカチを持たない人が増えているほか、床を濡らしなくないとの需要は高いと同社はみて、いずれ販売台数はコロナ禍前に近い水準に戻ると見通す。高付加価値を追求する顧客の間では、両面から振動のある気流を吹き付ける高級機種「パワードライクイック」への関心が高まっているという。一方、低価格で導入したい顧客向けには片面型を提案する。今後、コロナ禍前後での顧客層の変化などを分析し、新たな対応策を検討していく。


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日刊工業新聞 2023年11月23日

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