アイシン・ジェイテクトは「eアクスル」小型化…トヨタG各社が快適「車室空間」実現へ新技術
トヨタ自動車グループ各社が車内空間の有効活用に貢献する製品・技術を相次ぎ打ち出している。アイシンやジェイテクトは電気自動車(EV)化の中核となる電動駆動装置「eアクスル」の小型化に注力する。豊田合成やトヨタ紡織は自動運転車を想定し、快適な空間を実現する新技術を提案している。またトヨタ紡織は21日、愛知県と共同で、走行位置に合わせて車内に情報を表示する「デジタルコンテンツバス」の実証実験を中部国際空港島(愛知県常滑市)や周辺地域で実施。来港者の行動・属性データとも連携し、回遊機会を創出するサービスを目指す。
小型eアクスルで設計に自由度
アイシンは従来比で体積半減を目指すeアクスルの超小型モデル「第3世代」や、第3世代をベースに電力変換器や熱マネジメントシステムも一体化した「Xin1」を2027年に投入予定。組成を均一化した強靱(きょうじん)な材料を採用することでギアのサイズを半減。同ギアを使用した高回転モーターで小型化したことに加え、部品や機能の統合を徹底し「車室空間のデザインの自由度を高めることができる」(須山大樹第1EV先行開発部長)という。
ジェイテクトはeアクスルの小型・軽量化に向けて、減速機構の「ウルトラコンパクトシリーズ」を提案する。デファレンシャルギア(差動装置)は差動ギア構造を一新し、差動ギアの各かみ合い歯幅と出力ギアのかみ合い数を増加したことで従来構造の出力を保ったまま容積を半分にできた。車室を広く使えるほかバッテリー搭載量も拡大でき、航続距離延伸にもつながる。
変幻自在/座席で五感に訴え
豊田合成は「ロングテレスコ格納ハンドル」のコンセプトを開発した。アクセルやブレーキといった基本機能をハンドルに集約し、足元のペダルをなくすことで広いコックピット空間を実現。自動運転時にはハンドルをインストルメントパネル部に収納できる。同じく同社が開発している「ラップエアバッグ」はシートベルトにエアバッグを仕込んだもので、自動運転でドライバーがハンドルから離れた際にも身を守れる。石川卓技監は「エアバッグの位置を移動することで初めてハンドルを格納できる。組み合わせて提案したい」と語る。
自動運転「レベル4」の移動サービスを想定した、変幻自在な車室空間を提案するのはトヨタ紡織。空間コンセプトの「MX221」はグループ各社が協力して実現したもので、トヨタ紡織は主にシート機能を担当した。ファーストクラスをイメージしたMX221の最上級グレード「MX Prime」では音響やアロマミスト噴射、ゆりかごのように揺れる座席などで心地良い仮眠に誘導する。
一方、愛知県とトヨタ紡織の実証実験で用いるデジタルコンテンツバス「MOOX―RIDE(ムークス・ライド)」は、大型の透過ディスプレー、天井プロジェクション、3次元(3D)音響スピーカー、振動する座席などを搭載し五感に訴える仕様が特徴。車両は日野自動車の「ポンチョ」をベースにした。走行ルートや外の景色と連動し、観光地やグルメ紹介などのデジタルコンテンツ、広告を表示する。
同実証は第5世代通信(5G)などを生かした次世代事業・サービスの実用化を目指す「あいちデジタルアイランドプロジェクト」の一環。トヨタ紡織は中部国際空港向けに、来港者の行動や年齢・性別などの属性を可視化するシステムを提供している。今後はこれらの可視化データとムークス・ライドを連携し、顧客満足度につながる情報を表示することを想定する。
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