リモート雑草刈り、苗の移動にドローン…住友林業が林業を機械化する狙い
住友林業が林業分野で情報通信(ICT)技術の活用に力を入れている。木の伐採後、再度苗木を植え育てる「再造林」の作業を機械化し、作業者の負担や危険を減らす。日本では戦後造林された木が伐採に適した時期を迎えているが、再造林作業のコストの高さと人手不足により、伐採自体が進みづらい。メーカーや販売会社と機械を共同開発して自社を含めた企業や団体に導入し、造林作業を効率化することで、林業の担い手不足の解消や再造林率の向上を目指す。(田中薫)
住友林業は北海道紋別市と愛媛県新居浜市で、自社の社有林に伊MDBのリモート式下刈り機を導入した。造林後に木の成長を促進させるため、木が一定の大きさに成長するまで付近の雑草を刈り取る「下刈り」作業を機械化する。導入により、下刈り作業や伐採後の木の根の処理の効率が1・5―3倍向上する。
住友林業とJForest全国森林組合連合会、農林中央金庫が共同で実証実験を行い、国内で機械の輸入販売を行うギガソーラー(東京都港区)の協力のもと国内使用向けに機械を改良した。リモコン操作で下刈り作業ができ、けがの発生なども抑えられる。
下刈り作業は盛夏に行うため「新規雇用を増やそうとしても、下刈り作業でくじけてしまう」(寺沢健治資源環境事業本部技師長)ほど作業負担が大きく、再造林の支障となっている。特に新居浜市の社有林は傾斜が急なため、今回の導入で九州など別の傾斜地での有効性も検証する。
また近年、苗木の生産現場では生産と植栽の効率化のため、一定の大きさになるまでビニールハウス内の専用容器で育てる「コンテナ苗」の割合が増えている。住友林業はコンテナ苗の生産をさらに効率化するため、農業で使用される「ムービングベンチ」を導入した。ハウス内外をつなぐレールと棚板で構成され、苗木は棚板の上で育てられる。成長後、棚板ごとハウスの外に出して外気に当てる作業を行う。
コンテナ苗は畑で育てた苗に比べて重く、運搬作業で負担が生じる。ムービングベンチを使うことで人が手で苗木を持ち上げハウスの外に出す必要がなく、力の無い人でも作業できる。「林業分野で使用したのはおそらく初めて」(同)という。また、苗木を植栽現場まで運ぶ作業に飛行ロボット(ドローン)を活用している。農業用ドローンメーカーのマゼックス(大阪府東大阪市)と共同開発し、住友林業が社有林で使用するとともに、外販も行い、森林組合などで使用されている。
林業家は個人や小規模事業者が多く、大規模な設備投資は難しい。大手企業が積極的な機器の開発・導入を行うことで、業界全体で作業負担の軽減や、再造林率の向上が期待される。