日本高周波鋼業は赤字に下方修正、経常損益予想バラつく特殊鋼6社の懸念材料
販売数量の低迷やエネルギー高騰に直面する中で、特殊鋼6社の2023年4―9月期連結の経常損益はコスト低減などで愛知製鋼と三菱製鋼が増益となった。3社は減益、1社は赤字だった。厳しい受注環境が当面続きそうだが、24年3月期の経常損益予想は各社でバラつく。愛知製鋼(税引き前利益)が上方修正する一方、日本高周波鋼業は前期比トントンから赤字に下方修正した。
特殊鋼業界は自動車関連のウエートが高く、緩やかな回復をみせるが、サプライチェーン(供給網)が長く在庫調整に時間を要する。建設・産業機械を含め調整局面が続き、輸出は中国経済不振の影響で「選別受注」を推進する状況だ。
従来の原燃料高騰分は製品価格に転嫁し、数量は伸びずとも一定のマージン(利ざや)は確保してきた。ただスクラップ価格やエネルギーコストの先行きは、中国の生産動向や世界の政情不安などの懸念材料で不透明だ。
愛知製鋼は原燃料価格上昇が想定ほどでないとし、24年3月期の利益予想を上方修正した。「その分、10月―24年3月期の製品価格も上昇を見込みにくい」(後藤尚英社長)ため、売上高予想は引き下げた。
大同特殊鋼は適正マージン確保を掲げつつ、円安傾向を生かし自由鍛造品やチタン製品など海外需要の捕捉を継続する方針。山陽特殊製鋼は国内のほか「子会社である欧オバコの生産構造最適化でコスト削減を講じる」(八並敬之常務執行役員)。
三菱製鋼はバネ事業が北米での生産混乱の解消から数年ぶりに営業黒字に転換し、インドネシアの電炉事業の黒字が貢献する見通しだ。日本高周波鋼業は販売数量減の中で品種構成の高度化が課題となる。土地売却による特別利益で当期黒字を見込む。東北特殊鋼は引き続き適正価格への取り組みを進める。
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日刊工業新聞 2023年11月15日