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日本製鉄・JFE・神戸製鋼…「量から質」強化する高炉3社、下期は中国材に警戒感

9日出そろった高炉鉄鋼3社の2024年3月期連結業績予想からは、鋼材需要低迷に見舞われながらも「量から質へ」の強い姿勢がうかがえる。適正なマージン(利ざや)とコスト低減で、在庫評価影響などを除く「実力事業利益」は日本製鉄で前期比14・4%増の8400億円、JFEホールディングス(HD)で同78・1%増の2900億円を予想。神戸製鋼所は「実力経常利益」で同1・7倍の1415億円と高水準を見込んでいる。(編集委員・山中久仁昭)

神戸製鋼所の24年3月期業績予想は売上高を従来から200億円下げたが、経常利益は1450億円(同35・7%増)と据え置いた。鉄鋼・アルミなどの販売量は減るが、機械サービスの案件増や建機の円安影響などが効く。

鉄鋼原料価格は上期(4―9月)に下落し、下期(10月―24年3月)には反転するなど変動するが、鉄鋼事業の「実力経常利益」は325億円への着地を目指す。かねて鉄鋼黒字化の粗鋼生産目安は年600万トン台半ばとする勝川四志彦副社長は「今期600万トン弱の生産でこの利益(325億円)は計画通り」と述べた。

通期の「実力事業利益」について日鉄は従来予想を据え置いた。それでも8400億円を実現すれば過去最高額で、森高弘副社長は「長期ビジョンの事業利益1兆円の早期達成に取り組む」と語る。

JFEは従来予想から250億円下方修正した。鉄鋼事業の「実力事業利益」は2000億円で、前期の2・7倍。京浜地区(川崎市川崎区)で高炉を休止するなどコスト低減を徹底。25年3月期に鉄鋼で2600億円超、1トン当たり利益1万円の目標達成を図る。

しかし、3社は下期に警戒感を高めている。国内は自動車関連が回復基調だが、建設分野は需要先送りが継続。海外は経済減速が続こうと中国の存在感は大きい。中国の粗鋼生産は余剰能力削減どころか量が増え、東南アジアに多く輸出されて市況価格は低位にある。

日鉄の森副社長は「海外市況のスプレッド(鋼材と原料の価格差)は過去最低水準で未曽有の厳しい環境」と強調。JFEの寺畑雅史副社長は「中国の鋼材需要の年度内回復は難しい」、神鋼の勝川副社長は「アジア市況は大きな低迷だが(アジア向けは)多くないため、マイナス影響は限定的」としている。

高炉3社の通期粗鋼生産見通しは多少増減はあるが、いずれも低水準だ。各社とも「量を追わず質を高める」戦略で、適正マージンの確保のため原材料などの価格変動分は大口顧客向け「ひも付き価格」などに反映する活動に注力している。

23年4―9月期の鋼材1トン当たり平均単価は日鉄と神鋼が14万円強、JFEが13万円弱だった。アジア向け輸出を中心に、採算割れを避ける選別受注の動きは強まりそうだ。

日刊工業新聞 2023年11月10日

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