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「レクサス」手がけるトヨタ工場、AI活用のこだわり

トヨタ 挑む生産革新 #4
「レクサス」手がけるトヨタ工場、AI活用のこだわり

トヨタの田原工場では一部検査工程でAIによる自動化を実現した

トヨタ自動車で高級車ブランド「レクサス」を手がける田原工場(愛知県田原市)の一角。部品を組み付けた完成前の車両が列をなしてコンベヤーで運ばれてくる。何百にも及ぶ検査項目を基に不具合を見つける検査工程だが、そこでは目視確認を行う作業者が1人しかいない。

2018年から生産工程での人工知能(AI)活用に挑んでいる同工場。一部のラインで23年にAIを活用し検査を自動化した。十数台のカメラを使い、5車種で計252ある検査項目のうち、床材をめくらなければ確認できないといった人手が必要な検査を除いた111項目で画像検査を実施。万が一不具合があった場合は、即座に生産ラインが止まる。担当者は「作業者が神経を使う工程。負担を減らすと同時に不良を後の工程に流さない仕組みができた」と話す。

こだわるのは「現場ニーズに寄り添ったAI活用」だ。デファレンシャルギア(デフ、差動装置)にドライブシャフトをはめ込む工程では、細い針状の構造が折れる不具合を防ぐため、人が手で回して確認したり音で判断したりと「負担が大きい上に職人技が必要だった」(担当者)。そこでセンサーで取得した圧入モーターの電流波形から異常を検知するAIを導入した。田原工場の元吉秀幹主査は「人のノウハウとの組み合わせで、新しい視点が見つかる」と話す。

各工場でのデジタル変革(DX)の取り組みは、組織の垣根を超えて広がり始めている。衣浦工場(同碧南市)のデジタル化事例を田原工場に応用。その田原ではこれまで検査や車両組み立て、部品製造の各部門が個別の機器やソフトウエアを導入していたが、統一して展開しやすいシステムを構築した。今では高岡工場(同豊田市)や元町工場(同)など他の車両工場とも連携し、DX加速につなげている。

トヨタの現場変革は、もう一段の進化を遂げようとしている。貞宝工場(同)がその舞台だ。デジタルツインを活用しシミュレーション上で生産ラインを構築できるシステムを開発。また熟練技能者の動作を測定して機械で再現できるようにし、人材育成や作業の自動化、効率化につなげようとしている。現場での実データをデジタルに反映することでシステムの性能向上を図ると同時に、自動化ラインで使う治工具や設備には「からくり」を活用。独自の強さを持つモノづくりの地盤は整いつつある。

「将来、既存製品の生産技術や設計に携わる人員は不要になるかもしれない」「不具合の出ない生産ラインであれば、検査は人がやらなくてもいい」。衣浦工場や田原工場の技術者らからは、今の自らの仕事を否定するような発言が相次ぐ。既存の生産は最小限で行い、その人材や経営資源を新たなモビリティーづくりといった新分野に振り向ける―。こうした決意が、その言葉の裏にある。


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日刊工業新聞 2023年11月09日

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トヨタ自動車が、創造と継承の融合でモノづくりを再構築しようとしている。既存の生産ラインはデジタル技術を駆使して刷新。電気自動車(EV)では車体構造を一体成形する「ギガキャスト」に、積み上げた匠の技をフル活用し効率性を向上する。トヨタが挑む生産革新を追う。

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