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ヤマハ発動機・スズキ・三菱自動車…新発想モビリティーが解決するモノ

ヤマハ発動機・スズキ・三菱自動車…新発想モビリティーが解決するモノ

ヤマハ発の「モトロイド2」。身体的事情を問わずに運転できる設計にこだわった

「みんなで一緒に未来を考える場」―。東京・有明の東京ビッグサイトなどで26日、ジャパンモビリティショー2023が開幕した。自動車業界だけでなく、モビリティー産業まで枠組みが拡大したことで出展企業が増加。多様化するニーズや社会課題に対し、既存用途にとらわれない発想で開発されたモビリティーのコンセプトモデルも多数出展された。モビリティー利用時の障壁に対する解決策の提案も始まっている。(八家宏太)

【ヤマハ発】パーソナルモビリティー/乗れない諦め解消

ヤマハ発動機は新たなモビリティーの提案として、パーソナルモビリティー「MOTOROiD(モトロイド)2」を披露した。センシングで不倒状態を保つバランス制御技術「AMCES(アムセス)」を取り入れるなど、17年に発表した前モデルを改良した。

画像認識人工知能(AI)機能を持つカメラを複数搭載。人の手の動かし方などの所作で操作する「ジェスチャーコントロール」を乗車時だけでなく非乗車時も対応させ、「人のパートナー」としての存在感を際立たせた。座面を操作し乗り方を変えることも可能。ハンドルを持つ一般的な2輪車の乗車姿勢や、乗馬のように中腰でハンドルを持つ姿勢、ハンドルから手を離して所作で操舵(そうだ)する姿勢を選べる。

「乗りたいけれど諦める人をなくしたい」と、同社ブランドマーケティング部ブランド発信戦略グループの小川岳大氏は語る。年齢や腰痛などの身体的事情を問わずに運転できる設計にこだわり、低速から高速まで運転する用途や場面に応じた楽しさも追求した。小川氏は「新しい楽しさ、新しい用途などを実証で探したい」とする。

【スズキ】4脚モビリティー/段差の昇降快適に

スズキの「モクバ」。移動をシームレスにすることで、生活の利便性向上につなげる

高齢化が進む中、移動で課題となるのが段差だ。新設の集合住宅はエレベーターなどが導入されているが、古い建物では後付けが難しいケースも多い。旅客施設なども同様だ。国土交通省の調査によると、1日当たりの平均利用者が2000―3000人規模の旅客施設では段差の解消が9割以上進んでいるが、地方部などの利用者が少ない施設の対応は十分とはいえない。既存のモビリティーは利用に適さず、移動の利便性低下が指摘されている。

スズキが世界初公開した4脚モビリティー「MOQBA(モクバ)」は、平地では車輪で走行し、階段などの段差は脚の部分で移動する。用途に応じて、いすモードや立ち乗りモードなどに変更できる。乗車時に車体全体が低重心化する機能など利便性も追求した。

町で荷物の持ち運びに困る人を見て、助けたいと思ったことが開発のきっかけ。モクバは段差の手前で乗り降りしたり、止まったりする従来のモビリティーにおける移動の課題を解消。段差の昇降も含めた移動をシームレス(継ぎ目なし)にすることで、生活の利便性向上につなげる。

【三菱自】アウトドア向けバギー/「一歩先の冒険」を

コロナ禍の3密(密閉・密集・密接)回避の意味合いもありブームとなったアウトドアレジャー。三菱自動車は今回のショーで、アウトドア用途を想定したバギータイプの小型モビリティー「ラスト1マイルモビリティ」を披露した。いす型モビリティーの開発を手がけるライフハブ(東京都港区)と連携し開発。一般の自動車でたどり着いた目的地の「一歩先の冒険」を可能にするのがコンセプトだ。

高機能センサー「LiDAR(ライダー)」を搭載するなど、アウトドアでも「乗りやすさを第一に開発した」とライフハブの中野裕士最高経営責任者(CEO)は強調する。持ち運びしやすいよう折り畳みが可能。アウトドアで課題となる、自動車では走行が難しい地点への移動を可能にし、楽しめる範囲を拡大する。


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日刊工業新聞 2023年10月27日

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