「半導体製造用特殊ガス」ラピダスに供給、大陽日酸が北海道・苫小牧に物流拠点
大陽日酸は半導体製造に用いる特殊ガスの物流・サービス拠点を北海道内に新設する検討に入った。苫小牧市内のグループ会社の事業所敷地を活用する方針。最先端半導体の製造を目指すラピダスの新工場(北海道千歳市)などへの供給拠点とし、他社品の取り扱いも視野に入れる。半導体製造では多様なガスが使われ、工程の複雑化でさらなる増加も見込まれる。新工場の近くに中核拠点を整備し、特殊ガスの供給円滑化を図る。ラピダス新工場をめぐっては、海外半導体製造装置メーカーも技術支援拠点を開設する方針で、協力体制の整備が進む。
整備時期は未定だが、ラピダスが試作ラインを立ち上げる2025年を見据える。半導体製造では成膜やエッチングなど全行程で約30種類のガスが使われる。先端半導体では製造工程が複雑化し、より多種多量の特殊ガスが使われる見込み。通常、特殊ガスは道外から船舶輸送されており、それらの受け入れ拠点が必要。自社で取り扱いのない種類のガスも一括して受け入れ集積・保管することで、物流効率化とラピダスをはじめとする道内顧客の利便性向上を図る。技術サービスの中核拠点として機能させることも検討する。
ラピダスは千歳市内に次世代半導体工場「IIM―1」を建設予定で、大陽日酸は試作ライン向けのガスサプライヤーに認定された。関連設備工事の設計・施工に加え、構内に製造装置や貯槽を新設し窒素や酸素、アルゴンなどバルクガスの供給を行う。
同社は1月、半導体工場の新設が続く熊本県菊陽町に北九州市の事業所を移転し、敷地内に物流拠点を整備した。保管機能を2倍規模に拡大したほか、長距離輸送を削減することで、九州全域への配送効率を高めた。
ラピダス進出を機に産業集積が期待される北海道でも特殊ガスの取り扱いを強化するとともに、「2024年問題」を見据えた物流対策につなげたい考えだ。
海外の半導体関連メーカーもラピダス新工場の支援体制を整えている。
半導体製造装置大手蘭ASMLは24年内にも、北海道千歳市に技術支援拠点を新設する。同社が製造する極端紫外線(EUV)露光装置は、最先端半導体の生産に欠かせず、数十人から100人程度の技術者が、ラピダス新工場の生産ラインの立ち上げや保守点検に協力する。
同業の米ラムリサーチも道内に支援拠点を開設する方針を明らかにしている。
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