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混練時間10分の1に…リチウム電池向けで栗本鉄工所の「連続式混練機」に脚光

混練時間10分の1に…リチウム電池向けで栗本鉄工所の「連続式混練機」に脚光

二次電池関連の電極スラリー製造装置向けに受注を拡大している連続式二軸混練システム

液体・粉体、短時間で均一

栗本鉄工所がリチウムイオン電池(LiB)の生産向けなどで連続式混練機の受注を伸ばしている。従来は主に化学業界向けに展開してきたが、二次電池の電極スラリー製造向けに採用が広がる。電気自動車(EV)化の流れを背景に、LiBの増産を進める電池メーカーや自動車メーカーなどが試験機として相次ぎ導入。現在主流のバッチ式と比べて、連続式では混練時間を約10分の1に短縮するなど、生産性の向上が評価された。(大阪・池知恵)

LiBの正極材と負極材は、活物質や導電助剤、バインダー、有機溶剤を均一に混合させた電極スラリーを一定の厚みで塗膜する。素材を混合させる際に性状を極力変化させることなく、均一に分散させることが電池の性能に関わる重要な工程となるが、ここで栗本鉄工所の連続式混練機が注目されている。

同社は化学プラントや食品業界など幅広い業界向けの混練機で実績がある。性状の変化を抑えるためのスクリューの形状や組み合わせなど、かなりの技術力を必要とし、参入障壁が高いと捉える分野でノウハウを蓄積してきた。

電極スラリー向けでは、特に磁性粒子を樹脂などのバインダーと溶剤中に分散させてつくる磁性塗料向けに作っていた連続式混練機の技術が、「製品開発に生かされた」(住吉工場の藤井淳粉体プロセス本部長)。

連続式の強みは、容器内の空間が大きいバッチ式より、密閉状態で液体と粉体を混ぜ合わせるためにエネルギー密度が大きく、短時間で均一に混ぜることが可能な点だ。粉体を混ざりやすくする有機溶剤の使用量も減らせるため、後工程で電極スラリーを塗膜して有機溶剤を乾かす作業の短縮にもつながる。

これまで二次電池は、携帯やパソコンなどの小型用途しかなく、バッチ式で十分対応できていた。ただEV向けに大型のLiBが大量生産されるようになると、連続式が強みを発揮。生産規模が大きくなると、「連続式の混練機がコスト競争力でも優位性がある」(同)という。

連続式二軸混練システムの二次電池向け販売額は、2018年度の数億円から右肩上がりに伸び、23年度には累計販売額で約20億円を見込む。現在は試作向けに1台数千万円程度の小型機が大半を占めるが、今後は量産向けに1台数億円程度の大型機の受注拡大を狙う。そのためEV化が先行している中国や韓国向けにも販売網を広げ、事業拡大を加速する。


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日刊工業新聞 2023年10月16日

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