6分間の通話で認知機能を判定…AIシステムの仕組み
設問に工夫、声・回答分析
NTTコミュニケーションズ(NTTコム)は、電話を通じた質問への回答を人工知能(AI)が分析することで認知機能の低下状況を確認できる有償トライアルサービスを始めた。スマートフォンを使い、検査者が不要のため、どこでも約6分間で簡単に検査できる。高齢化で認知症患者が増え続ける中、認知症予備軍の早期発見につながるサービスとして自治体や金融・保険会社などの採用を目指す。
「脳の健康チェックプラス」は、NTTコムと日本テクトシステムズ(東京都渋谷区)が共同開発したAI「M―KENSA」を用いる。専用電話番号(0570・012354)に電話して質問に答える利用者の沈黙や声の高さ、年月や時刻の把握状況、質問に出てきた複数の数字の認識状況などを分析し、認知機能の状況を5段階で判定する。携帯電話からの利用で約180円、固定電話で約60円の通話料がかかる。
NTTコムは2022年、20秒程度の通話でAIが認知機能の低下を確認する無料サービス「脳の健康チェックフリーサービス」の無償トライアルサービスを始めた。菅原英宗副社長は「専用電話番号(0120・468354)へのコール数は48万件以上、90社以上の企業から関心を寄せられた」と大きな反響があったことを説明。その上で、質問が今日の日付のみだったことから「ランダムな質問に答えるほうがより良いとの意見があった」と話す。
このため、新サービスでは日付のほか、電話で聞いた質問を繰り返す「即時記憶」、聞いた複数の数字のうち最後の三つの数字を答える「ワーキングメモリー」を分析できる質問を用意した。分析用AIの研究にはシルバー人材センターなどを通じて公募した344人が参加。認知機能の低下を判別する機械学習モデルの精度が、短時間の検査でも高くなる設問パターンを導き出し、軽度・中程度の認知機能低下の疑いを約89%の精度で判別できるようにした。
久野誠史スマートヘルスケア推進室長は今後の展開について「23年度中にも法人向けサービスを提供できるよう検討している」と話す。特定企業向けに専用の電話番号を用意するほか、検査履歴を基に認知機能の変化を確認できる機能などを提供する見込み。カラオケと連動した検査の仕組み、健康を促す保険商品との連携など「パートナー企業・自治体との連携でより良いサービスを目指す」(久野室長)考えだ。(編集委員・水嶋真人)
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