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就航遅延のトキエア、懸念される財務体質の悪化

就航遅延のトキエア、懸念される財務体質の悪化

就航延期で人影のないトキエアのチェックインカウンター(新潟空港)

新潟県など前向きに支援

独立系航空会社のトキエア(新潟市東区、長谷川政樹社長)の就航が遅延している。運航の安全性を国が確認する実証運航を終えた最終段階にあり、新潟県は「今秋就航に向け、安全運航を最優先に準備を着実に進めてほしい」(花角英世知事)と支援する姿勢を維持。金融機関も支援を続ける構えだが、度々の遅延で財務体質悪化も懸念される。(新潟・渋谷拓海)

トキエアは8月中旬の台風の影響で、国などとの実証運航を延期した。直近では8月下旬の就航を目指していたが、9月以降、航空券発売日や運航開始日についての追加発表はないまま。実証運航は9月25日までに終了したが同社広報担当者は「国から宿題が出ており(克服のための)飛行を続けている」としており、就航の見通しを明らかにしていない。

旅客収入がないまま就航が延び、飛行機のリース料や人件費などの支出はかさむ。花角知事は県議会での質問に答えて「一定のリスクが発生しても安定して経営できるよう、資本金の増資や金融機関からの資金調達を進めていると聞いている」とした。県、商工中金、新潟信用金庫(新潟市中央区)と協調してトキエアに融資した大光銀行の石田幸雄頭取は「当然、固定費はかかっている。今後も実績のある金融機関としっかり支援していく」とする。

福田組として出資している新潟商工会議所の福田勝之会頭(同社会長)は「距離を置く銀行もあったが、県民が心配するなど、守っていただける動きが出てきている」と前向きだ。むしろ「円安がリース料に影響し、(発表済みの)運賃引き上げにつながらないかが心配だ」とする。

トキエアが公表している運航ダイヤは28日までの「夏ダイヤ」のみ。この期間に就航が間に合うかが、当面の焦点となる。だが、新潟市中央区を拠点とする旅行代理店関係者は「団体旅行だと、仮に今就航しても、夏ダイヤまでに手配が間に合わない」としており、稼ぎ時の運航開始は困難になりつつある。

トキエアは2020年設立。23年3月に国の航空運送事業許可を取得した後も、同社が発表した就航時期は6月30日、8月10日、8月下旬とずれ込んだ。国の検査への準備不足、関係先との調整、台風などが影響した。当初に運航開始するとしていた22年秋から1年が過ぎ、県議会で同社の資金繰りを心配する声が上がっていた

国内で独立系航空会社の参入は珍しく、運航開始できれば09年に就航したフジドリームエアラインズ(静岡市清水区)以来となる。

日刊工業新聞 2023年10月04日

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