海外依存リスク減らす…国内で航空機の整備能力を強化、ANAが協力中小開拓
国内で航空機の機体や部品を整備する能力を強化する取り組みが始まった。全日本空輸(ANA)は同業とも連携し、航空機整備に応用できる高度な技術を持つ中小企業の開拓を急ぐ。現在、国内は日常的な機体整備が中心で、自動車の車検にあたる重整備やエンジン整備、部品整備などは海外に頼る。国内で協力会社を開拓して、海外依存リスクを軽減し、より安定的な運航体制につなげる。(梶原洵子)
ANAは9月29日、整備分野の協力会社の開拓に向けて、都内施設で航空機整備関連技術の展示会を開いた。航空部品の加工などを行う中小企業6社が技術を展示。ANAだけではなく、ライバルの日本航空(JAL)や航空機メーカーの米ボーイング、仏エアバスなど航空業界から複数社が出席し、熱心に技術説明に聞き入っていた。「それぞれの視点で技術を見て、深く可能性を探る」(ANA担当者)狙いだ。
技術を展示した企業は個々の技術分野のスペシャリストぞろいで、航空機部品の加工を行う企業も多い。吉増製作所(東京都あきる野市)は板金部品、多摩冶金(東京都武蔵村山市)は金属熱処理、ウラノ(埼玉県上里町)は金属切削加工を得意としている。
スーパーレジン工業(東京都稲城市)は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の加工技術などを紹介。技術専門商社のコーンズテクノロジー(東京都港区)は、非破壊検査技術や3次元測定装置を持ち込んだ。
電子ビームによる溶接加工の受託やレーザークリーニング装置を販売する東成エレクトロビーム(東京都瑞穂町)の担当者は、「みなさんの一番の困りごとを聞かせてほしい」と語った。個社での技術に加え、中小企業同士のネットワークを生かし、解決策を提供する考えだ。
現在、航空各社は機体の小さな損傷などの通常の整備は自社で行うが、1年半に1度徹底的にチェックを行う重整備の多くは海外へ依頼しており、エンジンや部品・装備品は機体以上に日本での整備が少ない。ANAによると、日本から海外へ依頼する整備額は年2000億円規模と推定されるという。
コロナ禍前まで問題視されていなかった海外での整備だが、コロナ禍の供給網混乱や為替の変動を受け、リスクとして強く認識されるようになった。国内に委託できれば、航空会社にも受託する中小企業にも利点がある。
また、CFRP製の航空機部材が増加し、整備の難易度も上がっている。修理の際は内部の繊維破断を見分けて削り取り、別のCFRP材をそこにぴったり収まるように整え、接着する。これが非常に難しく、ANAでは修繕に3カ月以上かかった損傷もあった。CFRP技術を社外から取り入れ、修理のスピードアップを目指す。
まだ小さな取り組みながら、国内航空産業の活性化に向け、広がることが期待される。
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