半導体装置向け回復の兆しか…工作機械の電気・精密受注額、5か月ぶり大台
半導体関連向けの工作機械の需要に回復の兆しが見られた。日本工作機械工業会(日工会)がまとめた8月の工作機械受注実績で、半導体製造装置などを含む電気・精密の国内受注額が前月比41%増加し、5カ月ぶりに50億円を超えた。ただ今後も増加傾向が続くかは不透明で、日工会では半導体関連需要の回復が具体化するのは2024年以降と慎重に見る。工作機械各社は半導体工場の新設計画などを踏まえ、期待される需要回復の波にも備えた動きを進めている。(西沢亮)
日工会によると8月の電気・精密の国内受注額は、前年同月比32・9%減の50億9000万円だった。前年同月比では7カ月連続の減少で、まだ力強さには欠ける。ただ日工会の稲葉善治会長(ファナック会長)は「現時点で半導体製造装置関係の需要は散発的だ。水面下で話は進んでいるが、商談が本格化するのは早ければ年末、多くは年明けから」と見る。
日工会の家城淳副会長(オークマ社長)は、半導体工場の新設計画などを背景に「ほぼマスト(確実)な形で受注が上がってくるのは24年の春以降だ」との認識を示す。また台湾積体電路製造(TSMC)が進出する熊本県や米国での半導体生産回帰の動きなども踏まえ、「(半導体関連の需要は)大変期待できる」と強調する。
こうした半導体関連需要にも対応する動きの一つとして工作機械各社は、新型機の開発や品ぞろえの拡充を進める。
DMG森精機は5軸制御横型マシニングセンター(MC)「INH63」の受注を9月に始めた。デジタルツインを活用して最適な機械構造を追求し、高い加工精度や生産性を実現。最大直径1070ミリ×同高さ1000ミリメートルの加工対象物(ワーク)を加工でき、電気自動車(EV)の電池ケースなどともに、半導体製造装置のチャンバーハウジングなどの部品加工に対応する。
シチズンマシナリー(長野県御代田町、中島圭一社長)は、主軸台移動型コンピューター数値制御(CNC)自動旋盤「シンコムL20」シリーズを全面刷新する。半導体向けでは「ウエハーにガスを注入するバルブの加工需要などにも対応する」(担当者)という。
牧野フライス製作所は、真空チャンバーといった半導体製造装置部品の大型化などに対応するため、22年に5軸制御横型MC「a900Z」を、23年には4軸制御横型MC「a91nx」を相次ぎ投入。宮崎正太郎社長は、半導体の安定供給に力を入れる欧州連合(EU)の動きなどを踏まえ「欧州でも半導体分野を広げていく」と、国内外での需要取り込みに意欲を示す。