阪大など実証、細菌感染に強い骨構造の中身
大阪大学大学院工学研究科の松垣あいら准教授、渡辺稜太大学院生、中野貴由教授らの研究グループは28日、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の松本卓也教授との共同研究によって、骨の主成分であるコラーゲンとアパタイトが規則化し生体骨と類似した骨基質配向性が、細菌感染へ高い抵抗性を示すことを発見したと発表した。同配向性を実現する骨デバイスを治療に用いることで、骨疾患の早期回復が可能になると期待している。
研究グループでは、金属3Dプリンターで作製した基板上で同配向性の骨芽細胞を培養した上で、大腸菌と共培養を行った。培養後の大腸菌数を計測した結果、大腸菌の付着を抑制していることを確認。さらに長期に培養した結果、大腸菌数は大幅に軽減した。骨芽細胞からは、細菌の細胞膜を溶解して感染機能を抑制する働きがある抗菌たんぱく質の一種が多く合成され、細胞外へ放出されていたことも示された。
骨基質配向性を制御する脊椎スペーサーや人工関節など骨デバイスにより、インプラント埋入れで課題となる術後感染症やインプラント周囲炎などの感染抑制に効果が出ると期待される。また骨基質配向性が、骨密度以上に力学的強度を発揮できる利点もある。研究グループで開発した脊椎スペーサーは既に大規模臨床で応用されているという。
従来の抗菌性インプラントは細胞毒性から長期的安全性への懸念があり、抗菌性表面処理では抗菌効果の持続時間が短いことが課題となっていたという。 同研究は科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)「分解・劣化・安定化の精密材料科学」(高原淳研究総括)の一環で行われた。
日刊工業新聞 2023年09月29日