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洋上風力拡大のカギを握る「浮体式」発電機、大量導入で世界レベルの発電量へ

洋上風力拡大のカギを握る「浮体式」発電機、大量導入で世界レベルの発電量へ

欧州で実証する浮体風力(日本風力発電協会提供)

国内の風力発電整備で、洋上風力の拡大が見込まれている。日本風力発電協会(JWPA)によると2022年末時点で風力発電の国内導入量は陸上中心で480万キロワット。国内発電電力量の0・9%(環境エネルギー政策研究所〈isep〉調べ)に過ぎないが、30年代からは洋上風力が急増する見通し。同年代半ばからは発電機を洋上に浮かべる「浮体式」の大量導入が見込まれる。日本の風力関連産業を世界レベルに育成するチャレンジとなる。(いわき・駒橋徐)

日本の風力発電導入量

大きな潜在力 50年めど6000万kW導入

国内の洋上風力導入量は現状では14万キロワット。今後は発電機を海底に固定する「着床式」の設置エリアが港湾区域から一般海域に広がり、31年度までに41件(出力合計1820万キロワット)の運転開始が計画段階にある。JWPAは洋上における風力発電の潜在性について、水深50メートルまでの着床式で1億2800万キロワット、同100―300メートルの浮体式が4億2400万キロワットと試算する。

JWPAは50年までに国内で1億4000万キロワットの風力発電を導入するビジョンを掲げるが、「洋上風力で1億キロワット、うち浮体式で6000万キロワットになる」と中村成人専務理事は説明する。経済産業省の「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」は40年に浮体式も含めて3000万キロ―4500万キロワットの洋上風力導入目標を設定している。JWPAは50年には浮体式が最大になると予想する。

2010年代に小名浜港で組み上げた福島沖向け浮体風力

浮体式への取り組みを世界レベルで見ると、日本が福島県沖で3基を並べて世界最大規模で実証した20年までは、ほぼ横一線だった。だがその後、23年までに世界で18件が実証を中心に完成。このうち欧州連合(EU)が11件でノルウェーのエネルギー企業であるエクイノール(スタバンゲル市)による8600キロワット×11基のウインドファーム(集合型風力発電施設)が最大だ。EUでは大型案件が続き、世界では計2700万キロ―6100万キロワットの浮体式の計画がある。

日本が遅れずに浮体式を伸ばすには、排他的経済水域(EEZ)における開発の法制化、50年までの国の導入目標の策定、数10万キロワットの案件を各海域で具体化することが求められる。また、実用化には設備利用率50%以上が必要だ。

量産の時期探る 福島県沖で実証加速

国内では福島県沖で13年から21年まで、日本製風車で半潜水状態の浮体を使うセミサブ式、柱形浮体のスパー式で実証を実施した。

五島沖の2000キロワット浮体実用設備

現在、事業化しているのは、長崎県五島市などが運営・売電する1件。戸田建設が五島市沖で、波の影響を受けにくいハイブリッドスパー式のダウンウインド型風車1基(2000キロワット、日立製作所製)を設置した。新たに8基の浮体式設備も国の一般海域公募事業の第1号で23年末に完成予定だ。1基1万キロワット以上の事業化で、設備利用率50%が目標だ。

清水建設は浮体式で三菱造船(横浜市中区)、日鉄エンジニアリング(東京都品川区)と連携し、建造の検討を進める。清水建設はクレーン最大揚重能力2500トンの作業能力を持つ自航式SEP(自己昇降式作業台)船を建造し、当面は需要の多い着床式に対応する計画。

清水建設は浮体式では福島県でのプロジェクトにおいて三菱造船、日鉄エンジとともに、2基のセミサブ浮体建造と海底ケーブルの総合エンジニアリングに携わった。3社は浮体式の量産の検討を続けている。今後の市場動向を見ながら事業の展開時期を探る。

東京ガスは信夫山福島電力(福島市)と共同で、福島県沖で風車2基の実用化を目指して環境アセスメントに入る。27年完成目標で東京ガスが資本参加する米プリンシプル・パワー(カリフォルニア州)のセミサブ式浮体を設置する。EUでは実用化されており、「福島県沖を第1弾に、国内では現実的な案件で実用化していく」(東京ガスの広瀬路子再生可能エネルギー事業部再エネ第2部長)という。

東京電力リニューアブルパワーは、22年に英フローテーションエナジー(エジンバラ市)を買収。スパー型浮体式と、浮体とおもりで構成するテトラ・スパー型の浮体を運転開始する。東電グループは風力発電で浮体式に集中し、国内事業化では出力1万5000キロワット以上の設備で30年代後半から事業拡大を図る。

組み立て基地整備 部品調達網を充実

日本の海洋構造物に関する技術力はトップクラス

浮体式風力発電には大型風車・浮体構造の陸上組み立て基地の整備が欠かせない。国内に風車メーカーがないだけに、一体成形の風車と浮体構造をどう調達するかは大きな課題だ。

米ゼネラル・エレクトリック(GE)は、東芝エネルギーシステムズと洋上風車のナセル生産で連携。東芝グループは部品サプライヤーを増やして国産化し、組み立ても含め風車の国産化につなげていく構え。

日本の産業界は40年までに洋上風力発電設備の国内調達比率60%達成を目標としており、海外風車メーカーの組立工場誘致や部品の国内製造推進が期待される。ブレードの長さが100メートルを超える大型風車の大量生産が始まれば、造船所での対応は困難だ。このため、港湾で組み立てるインフラ設備の立地が求められる。

日本はEEZも含めて浮体式を設置可能な海域が広い。海洋構造物の施工技術力は世界トップクラスにある。大手風車メーカーは「日本ほど(充実した)サプライチェーン(供給網)を構築できる国は世界にそうない。じっくり国がバックアップして進めてほしい」と話す。

国はGI(グリーンイノベーション)基金事業で、浮体式風力発電の実用化に向けた開発を進める構え。国のリードにより風車の国産化、日本ブランド化につながることが期待される。

日刊工業新聞 2023年09月19日

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