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冷暖房の消費電力20%削減、中部大が開発した透明薄膜フィルムのしくみ

中部大学の多賀康訓特定教授は窓に貼ると熱の侵入や放出を大幅に抑えることができる透明薄膜フィルムを開発した。銀膜と酸化セリウム(セリア)膜を貼り合わせたフィルムで、年間を通じて冷暖房の消費電力を約20%削減できることを確認した。今後、自動車関連メーカーと共同で実用化を目指す。

開発した透明薄膜フィルムは、厚さ約10ナノメートル(ナノは10億分の1)の銀膜と同30ナノメートルのセリア膜を貼り合わせた。熱を吸収しにくい銀の性質を生かし、セリア膜で銀を保護する。窓に貼っても室内の明るさに影響しない。

厚さ3ミリメートルのポリカーボネートの窓を使い、外気温度50度C、室内温度25度Cと夏場を想定した実験では、同フィルムを貼った窓の表面から室内に流入する熱の温度を49度Cから26度Cに低下できた。冷房の消費電力は約20%削減につながった。冬場を想定した実験でも、同様の省エネルギー効果を確認した。

実用化の段階で、フィルム代と作業費を含めて1平方メートル当たり1万円程度と見通す。電気自動車(EV)の窓ガラスに同フィルムを利用すると、冷暖房利用による電池負担を軽減。走行距離への影響を抑えると期待する

日刊工業新聞 2023年09月14日

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