赤字脱却目指す日野自動車、不正の「膿」を出し切れるか
商用車2社の2024年3月期は、いすゞ自動車が2期連続の過去最高業績を見込み、日野自動車は4期ぶりの当期損益の黒字転換を目指す。いすゞは国内・北米の販売が伸び、価格対応などで売上高と営業・経常・当期の各利益で過去最高更新を見通す。前期までに不正の「膿」を出し切り、100億円の当期利益を予想する日野自は、2月に出荷再開した大型トラックやアジアを中心とした海外市場取り込みなどで回復基調に戻したい考えだ。
いすゞの24年3月期の世界販売台数は前期比1000台減の77万台を見込む一方、営業利益は同2・6%増の2600億円の予想。アジアや中南米などで販売台数を落とすが、海外に比べ利益率の高い国内は「半導体不足だった状況から上期で正常化する」(山北文也企画・財務部門バイスプレジデント〈VP〉)とみて台数の大幅増を見込む。今期、17年ぶりに全面改良し投入する主力の中小型トラックにも期待がかかる。
3期連続の当期赤字からの脱却を目指す日野自。エンジン不正の「認証関連の損失は、国内はおおむね23年3月期でピークは越えた」(中野靖最高財務責任者〈CFO〉)とし、今期巻き返しを図る。不正による型式指定取消処分の対象車種のうち、「A09Cエンジン」を搭載する大型トラック「日野プロフィア」の出荷再開やインドネシアなど好調な海外販売、国内の土地売却益が黒字化に寄与する。一部、認証再取得に向けた開発中のエンジンが残ることや半導体不足の影響も継続し「完全な回復にはもう少し時間がかかる」(同)状況だ。
この間、国内シェアが向上したいすゞは「商用車の車検は1年のタームで行う。シェアが増え、保有台数が増えたため(アフターセールス事業の増加に)即、効いてくる」(南真介社長)見通しだ。
また両社出そろった電気自動車(EV)販売も業績に寄与する。22年6月に日野自がEV小型トラック「日野デュトロZEV」を発売し、23年3月にはいすゞがEV小型トラック「エルフEV」を発売した。両社に先駆けて17年に国内初の量産型EV小型トラック「eキャンター」を投入した三菱ふそうトラック・バスは3月、同車種を全面改良し発売した。競争は激化し、初めて導入する顧客にいかに強みを訴求できるかが問われる。
決算発表会見時に中長期の展望を公表したいすゞと日野自。共に電動化や「つながる車」の技術など新技術・事業創出のための人材投資の重要性を示した。いすゞは30年までにカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の技術開発を含め合計1兆円規模の投資を予定。日野自も「経営基盤である人の成長を優先する」(小木曽聡社長)とした。