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拡声器一筋だった老舗がスマホ用スピーカーブランドを立ち上げた理由

拡声器一筋だった老舗がスマホ用スピーカーブランドを立ち上げた理由

立体図案(左端)から変更を重ねたミニコンポのアンプ(右端が完成機)

ノボル電機(大阪府枚方市、猪奥元基社長)はクラウドファンディング(CF)で購入支援者を募り、2021年にスマートフォン用スピーカー、23年2月に小型コンポーネントステレオ(ミニコンポ)と、自社ブランドを開発した。レトロ(懐古的)なデザインや音質が人気を呼び、スピーカーは支援者192人、ミニコンポは同86人を集めた。

拡声器や構内放送機器などを手がける同社の猪奥社長は「一番の狙い目は意識改革だった。変わろうとする士気、挑戦心が芽生えている」と、手応えを示す。45年の創業から拡声装置一筋で、国内メーカー3社の一角を守ってきた。しかし「拡声器のデザインは変わらず、昔から同じ注文書がファクスで届く。『変わらない』をよしとしてきた」(猪奥社長)。市場も縮小しているがコストダウンで事業を続けられてきたため、変わるチャンスをつかめなかった。

しかし18年に猪奥社長が父を継ぎ3代目に就いた。同年には本社工場も移転・新築し、好機が訪れる。猪奥社長は認知度を高める作戦として、当時広がり始めたオンラインCFに着目。若手らでチームを結成し、新たに消費者向けブランド「ノボル電機製作所」をCFで立ち上げた。懐かしさを感じるレトロなスマホ用スピーカーとミニコンポは、CF成立に必要な購入額に短期間で達した。猪奥社長は慣れなかった会員制交流サイト(SNS)も必死で学んで情報発信し、トップから社員までブランドづくりで一つになった。

ノボル電機製作所の直販サイトも開設し、CFから一歩先に進んだ。ただ、消費者向けブランドの販売を伸ばすのが真の目的ではない。猪奥社長は「ノボル電機を知ってもらえば販路も広がる」と説明する。すでに自動車業界から音声関連で製造を受託し、成果を上げている。「CFは殻を破り、外に出るためのステップ。新工場の生産余力を生かし、製造受託も増やしたい」と意気込む。

日刊工業新聞 2023年09月07日

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