東レが東海大のソーラーカーに炭素繊維で貢献!50%軽量化
東海大の挑戦を支援、知見ヨコ展開
東レが同社の炭素繊維で、東海大学のソーラーカーレースの挑戦を支援している。車体には炭素繊維強化熱可塑性樹脂「トレカ」や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が用いられ、航続距離延伸に重要な軽量化に貢献。車両の開発・製作に当たっては、挑戦的な新技術や手法も検証されており、一部では他の製品にも横展開が可能と見込む。モビリティー分野をはじめとした自社事業とのシナジーや、技術者の育成に関しても効果が期待される。(狐塚真子)
「2019年以降に創出された新しいアイデアや技術を最大限活用したチャレンジングな設計」―。炭素繊維複合材料製部品を手がける東レ・カーボンマジック(滋賀県米原市)の奥明栄社長は、同社製品が採用された東海大の新型車両「Tokai Challenger」についてこう言及する。
東レ・カーボンマジックは、11年に東海大との共創を開始した。東海大は世界最大級のソーラーカーレースで優勝奪還を狙っている。長距離の走破で重要なポイントの一つとなるのが車体の軽量化だ。
材料には、高弾性系・高強度系炭素繊維を適用した。剛性の確保が必要な部分では、CFRPで発泡体を挟んだサンドイッチ構造を実現するため、米島フエルト産業(大阪市都島区)との連携も図った。
同構造では、厚みをもたせることによって剛性を高めながら、コアの軽量化によりCFRPの強みを生かせる。一方、車体の曲面に適用するには課題があった。
そこで、米島フエルト産業が開発した六角形のコアフレークを活用。現在、同材料はモータースポーツ関連で使用され始めているが、今後「海外にも展開していきたい」(米島フエルト産業の米島智哉社長)考えだ。
材料の改善や、構造の効率化などにより、車体全体の重量は24・6キログラムと、19年のモデルに比べて約50%の軽量化を実現した。
工法でも新たな取り組みとして、樹脂を常温で硬化するといった省エネルギー成形法に挑戦した。重量面で影響が出るため、今回はオートクレーブ成形を基本としたが、「(同成形法が)通用するカテゴリーもあるため、広げていくつもりだ」(東レ・カーボンマジックの奥社長)という。
調査会社のグローバルインフォメーションは、世界のソーラーカー市場について、22年の10億8000万ドルから23年には14億4000万ドルに成長すると予測する。脱炭素の潮流が加速する中、得られた技術の横展開によって、東レの炭素繊維事業の拡大が期待される。
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