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大容量の短絡試験設備、富士電機が千葉で立ち上げる狙い

大容量の短絡試験設備、富士電機が千葉で立ち上げる狙い

大容量の短絡試験設備を導入予定の千葉工場

富士電機は大容量の短絡試験設備を千葉工場(千葉県市原市)に設置し、2024年度早期に立ち上げる。投資金額は数十億円を見込む。受変電設備などにおける開閉装置・遮断器や変圧器、低圧・高圧盤などの試験が対象。これまで大容量の試験をする場合、中国や韓国などの認証機関に持ち込んでおり、完了まで1―2年かかることもあるという。自社工場への設備導入で製品の開発期間を従来の40%程度まで短縮できる見通し。国内外で伸びる需要に迅速に対応できる体制を整える。

短絡試験は事故や災害時を模した大電流・大電圧を発生させ、実際の機器の耐久性や遮断性などを調べるもの。

国際電気標準会議(IEC)などの海外の規格適合・認証取得のためには製品の認証試験が不可欠になる。富士電機は現在、大容量の短絡試験設備を保有しておらず、中韓など海外で試験している。国内での試験は競合他社が保有する設備を使用する必要があるため「機密保持の観点から行っていない」(富士電機)。

一方、海外に機器を持ち込んでも試験が1度で終わらない場合もあり、次の試験を予約するのに3カ月程度待つことがあるという。製品輸送にも時間がかかるため、試験を複数回繰り返した場合、試験工程だけで1―2年かかることもあるという。開発の完了や市場への投入まで時間がかかってしまい、機会損失の恐れがあった。

千葉工場に大容量の短絡試験設備を導入することで、必要な検査を自社で完結することができ、開発期間や市場投入の短縮が期待できる。立ち上げ後は、認定試験場の認証取得を目指す。

カーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)の取り組みの中で、発電所や鉄道の地上変電設備のほか、データセンター半導体製造工場といった施設電源などでのエネルギーマネジメントの重要性が世界的に高まる。


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日刊工業新聞 2023年08月24日

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