製造現場では少子高齢化による人材不足や人件費の高騰は避けられない課題になっている。パソコンなどの基板の実装ラインも例外ではない。そこでパナソニックコネクトは顧客企業の実装ラインの自動化構想を進めている。この一環として、新たな多目的自律搬送ロボット（ＡＭＲ）を試作した。既にユーザーが使用している他社製のＡＭＲと連携可能で、現在の環境を生かしながら効率性を高められる。（編集委員・安藤光恵）

試作したＡＭＲの大きさは幅８７０ミリ×奥行き５００ミリ×高さ６００ミリメートル。プロセスオートメーション事業部の上田昌史シニアエキスパートは「一般的な工場の通路幅１２５０ミリメートルを、運搬しながらでも通れるようにした」と語る。本体上に荷物を載せて運搬するのではなく、把持部を設けて台車を運搬可能にした。最大５００キログラムの台車を毎秒１メートルで搬送できる。把持部の設計や走行方法の工夫で、さまざまな台車に対応する。

最大の特徴は、ＡＭＲの群制御システムを使い、他社のＡＭＲと連携できる点。ＡＭＲは自動走行で障害物を認識すると避けるか走行をやめる。同じメーカーのＡＭＲ同士では協業できても、メーカーの違うＡＭＲ同士が鉢合わせすると互いを障害物と認識してしまう。１台がギリギリ通れる幅の通路では、違うメーカーのＡＭＲが鉢合わせると、その場で走行をやめることが課題だった。

システムによる一括制御で、一部ＡＭＲの一時的な運転停止が不要になり、効率的に運用できる。同事業部の開発２課の今仲隆晃課長は「ＡＭＲの置き換えではなく追加導入を目指すことで他社ユーザーの需要が見込める」と説明する。システムと、他社製と役割が重なりにくい台車運搬ＡＭＲにより、各ＡＭＲが得意な作業を分担する形を目指す。ユーザーの需要を踏まえ、他のＡＭＲメーカーの協力も得ていく。

運搬を想定するのはリールに巻いたテープ状の電子部品。部品を供給するフィーダーに装填した状態で装置まで運ぶ。金属のフィーダーが重いため、ＡＭＲによる負担軽減の需要を見込む。フィーダーの取り付けや交換の負荷も減らすため、並べたフィーダーをまとめて装置に入れ自動で供給を始める「オートセッティングフィーダー」も試作している。

フィーダーは２０２３年度中、ＡＭＲは２４年度に製品化予定だ。将来は人工知能（ＡＩ）も活用し、計画と実行、制御をそれぞれの現場に応じて提供できる技術の確立を図る。３０年度に実装ライン向けの「プロセスオートメーション事業」で４０００億円の売り上げを目指す。

目標は「自律的に進化する工場」（上田シニアエキスパート）。人手不足などで、ベテランの知見に頼ることは次第に難しくなっている。それを設備やシステムが補い、経験による作業レベルのばらつきをなくし、誰もが作業しやすい実装ラインを構想する。少数の作業者に大きな負荷がかかることを未然に防ぐことが期待される。