リンナイが年10万台ほど販売する「ガス衣類乾燥機」、さらなる拡販への壁
代替技術を模索
リンナイが製造するガス衣類乾燥機「乾太くん」の拡販に向けた課題が見えてきた。電気式の乾燥機と比べ短時間で乾かせるため、家事の時短を求める共働き世帯に売れているという。だが、設置には蒸気を外に排出する管の設置が欠かせない。既存の住宅に後付けするのは難しいのが実情のようだ。同社はガス衣類乾燥機の国内普及率を1―2%とみる。さらなる普及には製品構造の改良が必要だ。(名古屋・永原尚大)
洗濯を終え湿ったタオルを乾太くんに入れて数十分ほど乾燥させると、カラッと乾いていた。電気式の乾燥機と比べ、乾燥時間の短さこそガス衣類乾燥機の強み。6キログラムの衣類で比べると乾燥時間は2―3割の約60分に短縮できる。
近年、20代から30代の子育て世帯を中心に売れている。かつては年間2万台前後だった販売数が、今では同10万台を超える勢いだ。共働き世帯の増加による家事の時短需要が高まっているためだ。
衣類乾燥機の国内普及率が約50%とされる中、ガス衣類乾燥機は少数派の存在だ。7月に乾太くんの累計販売台数は100万台を突破したが、1992年の発売から31年という長い時間を要した。ニッチな市場でも生産し続けてきたことが報われた格好だ。
「爆発的な利益があったわけではないが、我々が撤退すると(ガス衣類乾燥機を)リピートできなくなる」。リンナイの担当者は生産を続けてきた理由をこう説明する。かつて国内ではリンナイのほかパナソニックも手がけていたが、同社は2007年に撤退。その後、社会構造が変化し、ようやく日の目を見るようになった。
一方、需要が拡大する中で、拡販につなげるための新たな課題が分かってきた。乾太くんは乾燥時に出る蒸気を外に排出する管の設置が欠かせず、壁の穴開け工事ができない一戸建てやマンション向けの普及で障壁となっている。新築は初めから設置を考慮した設計にできるが、既存住宅への設置は容易ではない。
リンナイは排気の管を不要とする製品開発に取り組む考えを示している。製品構造の革新によって高まるガス衣類乾燥機の需要を取り込むことができるか―。熱が冷めないうちに、新たな技術の投入が必要といえそうだ。