働き方・キャリア選択できる仕組みに転換必要、厚労省研究会が指摘したこと
企業主導型から希望配慮型へ
厚生労働省の研究会は10日、労働者が働き方やキャリアを選択できる仕組みに転換することなどを求めた、新しい時代の働き方に関する中間報告案をまとめた。配置政策の企業主導型から労働者の希望配慮型に転換を進める。労働者のキャリア形成を促すため、労使コミュニケーション体制の整備を提言した。労働行政については、労働者の安全・安心を守る役割に加えて、働き方やキャリア形成の選択を支える役割を重視すべきとした。(幕井梅芳)
中間報告案では、労働者と会社との関係が従来の「会社の指揮命令に従って働く」関係から、「労働者の働き方・キャリア形成を支援しつつ労働者の活用をはかる」関係に転換すべきと指摘した。その上で、これからの雇用管理について「画一的」雇用管理から「多様性を生かす」姿勢へ転換が必要とした。
労働行政の役割については、従来からの役割(守るべき労働基準)として、労働者の「安全・安心」を守ることを挙げた。 一方で、今後重視すべき役割(支える労働基準)について、労働者の働き方・キャリア形成の選択を「支える」ことと、労働者の働く際の希望を「支える」ことを求めた。
労働基準のあり方について、労働者の多様化に沿った多元的な労働基準法制の整備が必要とした。これを実現するには「労働者の意見を反映できる」労使コミュニケーション体制の構築が必要とした。同時に、市場機能を生かす情報開示策を拡充していく手法も提言した。
法政大学大学院の山田久教授は「日本はキャリアの自立を支える共助の仕組みが弱く、本当に強い人しか生き残れない」と指摘する。中間報告はキャリアの自立を前提として、全体が構成されているものの、会社も社会も、それを支援する行政も関与度合いが薄く、「日本人のキャリア孤立」に陥る懸念が生じてきたことが背景にある。
欧米では職業別のコミュニティーが個人のキャリア形成に重要な役割を果たしている。例えば、スウェーデンでは職業別、産業別の組合が大きな役割を持つ。ホワイトカラー労働者を対象に、労使双方が関わって再就職支援を行う非営利財団や、ブルーカラー向けや公務員向けの再就職支援を行う財団もあるという。
キャリアの共助を生み出す場として大学も可能性がある。大学は社会人のキャリアチェンジを支援するプログラムもあり、社会的な価値を認められており、コミュニティーやネットワークをつくる余地があるためだ。
企業や行政だけでなく、大学や労働組合なども連携して、労働者のキャリア形成を支援していくための新たな仕組みづくりが求められている。