「テレワーク継続意欲」労使間で温度差…ポストコロナの新たな課題に
コロナ禍の収束による、企業のオフィス回帰が加速している。日本生産性本部がまとめたテレワーク意識調査で、直近1週間の出勤日数が3日以上と回答した割合が管理職で全体の52・9%、一般社員(テレワーカー)で45・5%と多かった。労使間でテレワーク継続意欲に温度差があり、会社側が今後出社要請の“圧力”を強めることで従業員の不満が高まる可能性がある。ポストコロナの働き方改革において新たな課題となりそうだ。
日本生産性本部が初めて実施した「テレワークに関する意識調査」は一般社員と、一般社員を部下に持つ管理職をそれぞれ1000人対象にした。調査期間は5月29日から6月6日まで。長田亮主任研究員は「感染症法上の位置づけが5類に移行したこともあり、それぞれの会社にとってベター・ベストな働き方として出社の方が効率が高いという判断によりテレワークの実施率が低下している」とオフィス回帰を分析した。
今後もテレワークを行いたいかを問う質問について、「そう思う」と答えた一般社員は55・9%と高いが、管理職は41・5%だった。日本でテレワークが今よりも広がっていくと回答した割合も一般社員が20・6%なのに対して、管理職は13・9%とやや懐疑的な見方が強いようだ。「企業の多くはオフィスを持っているので、それを有効活用するのは非常に重要であり、出社を是非してほしいと考えるのは経営者側として当然だ」と長田主任研究員は会社側の事情を推し量った。
また、この温度差の背景には、満足度も関係していそうだ。自身のテレワークでの働き方について、一般社員の30・5%が満足しているが、管理職は20・0%にとどまった。テレワーク導入による職場の仕事効率の変化を見ても、管理職の回答は効率が下がった・やや下がったの比率が一般社員より5・5ポイント高かった。管理職の中でテレワーク制度への否定的な評価が少なくないようだ。
今後、原則出社の時代に戻る際のリスクも見えてきた。勤め先でテレワーク制度が制限・廃止となった場合の対応について、一般社員の16・4%が退職・転職を検討すると答えた。管理職は9・6%であり、ここでも意識の大きな差が顕在化している。長田主任研究員は「テレワークをしている人たちは非常に満足度が高く効率も高いと思っているので、制度を急に廃止・削減されることはかなりネガティブにとらえられる」と説明した。
実際、国内外の大手企業でオフィス回帰の動きが活発だ。対面を重視しがちな日本以上にデジタル変革(DX)が進む米国のIT大手ですら、出社とテレワークを組み合わせたハイブリッド型の働き方に移行しつつある。テレワーク制度の是非は業種・業態によって違うものの、一つの選択肢としてテレワークを残すことは働き方改革を推進する上でも重要だ。
少子高齢化で労働人口が減り続ける日本において、経営者は働き手から選ばれる職場づくりにより真剣に向き合わなければならない。