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半導体商社で生き残りへ…経営統合の菱洋エレクトロとリョーサン、社長が語るそれぞれの展望

菱洋エレクトロとリョーサンは2024年4月1日付での経営統合を目指す。両社の連結売上高を合わせると、半導体商社のトップ集団に入る見込みだ。顧客基盤を強化しながら事業機会を拡大し、製品やサービスの付加価値向上を狙う。統合を人材育成の機会とも捉えており、社員にさらなる成長を促す契機になりそうだ。半導体商社業界での生き残りをかけた一歩を踏み出した両社の社長に、統合の背景や今後の展望などを聞いた。

菱洋エレクトロ社長・中村守孝氏「外側と接点持ち人材育成」

―統合を目指す背景に、どのような問題意識がありましたか。

「当社が大きな成長を遂げるには1社では難しく、いつ、どのような企業と、何をしようかと思案していた。同時に、このままでは若い人たちに新たな活躍の場を提供するのは困難だと考えた」

―リョーサンと合意するまでの経緯は。

「当社は三菱電機の、リョーサンはNECの系列で、接点がなかった。2021年の初頭にリョーサンの稲葉和彦社長が私を訪ねてきて、若く情熱のある人という印象を受けた。親交を深める中で、1年ほど前に手を携えないかという話になった」

―統合後の展望は。

「人材育成の機会だとも捉えている。内側にこもるのではなく、外側と接点を持つことで挑戦ができる。自分自身の頭で考えて、課題解決ができる人に育ってほしい。また、質と量のそれぞれを充実させる好循環をつくり、今までよりも大きな価値を提供したい」

―他社の合流についての考え方は。

「まずはリョーサンとの経営統合を目指すことに集中する。ただ志やビジョンを同じにし、価値観をともに分かち合える出会いがあれば、他社の合流については真っ向から否定することではない」

菱洋エレクトロ社長・中村守孝氏
リョーサン社長・稲葉和彦氏

リョーサン社長・稲葉和彦氏「経営統合で共通課題解決」

―統合を目指すことを決めた背景は。

「日本市場に上場する半導体関連の商社は二十数社ある。各社違いはあるが、極端に異なる事業を展開しているわけではなく、(その多さは)異様とも言える。付加価値向上のため、多くの顧客と接点を持ちたいと考えていた。業界動向や当社が持つ課題を菱洋エレクトロの中村守孝社長と話す中で、一緒にやった方がいろいろなことができそうだと判断し、目指す方向性についても中村社長と意見が合致した」

―期待する相乗効果は。

「当社は自動車分野の顧客が多いが、菱洋エレクトロは医療分野の顧客が多い。統合して顧客層が広がることで、異なる業界であっても共通する課題があることに気付ける可能性がある。顧客に対する理解も深まり、提案できる解決策が増え、新たな価値の提供にもつながる」

―菱洋エレクトロがリョーサン株を取得しています。

「社内では驚きの反応もあった。ただ目的は、1社だけでは創造できなかった価値を顧客に届け、喜んでもらうことだ。それには両社が対等の精神で統合を目指さないといけない。経営統合後の会社のあり方については検討しているところだ」

【記者の目/業界取り巻く状況に危機感】

リョーサンはルネサスエレクトロニクスなどと特約店契約を結んでいることを背景にデバイス分野に強い一方、菱洋エレクトロはサーバーなどIT分野が堅調だ。ただ一般的に半導体商社は、多数の競合他社との差別化が図りにくい上、サプライヤーの意向に影響を受けやすい。今回の統合は、業界を取り巻く状況に対する危機感の表れとも言える。(阿部未沙子)


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日刊工業新聞 2023年07月13日

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