菱洋エレクトロとリョーサン統合…半導体商社の再編加速、生き残りかけM&A
半導体・電子部品商社の再編が加速している。菱洋エレクトロとリョーサンは2024年4月1日付での統合を目指し、準備を進める。半導体・電子部品商社のM&A(合併・買収)の動きは、これまでも活発だった。半導体メーカーの直販志向や代理店の集約、モノ言う株主の存在など、さまざまな背景がある。商材や顧客層の拡大といった統合効果を最大限に引き出し、顧客にとっての付加価値を向上できるかが問われる。
5月、菱洋エレクトロとリョーサンは経営統合に向けて基本合意書を締結したと発表した。半導体・エレクトロニクス業界のコンサルティング会社、グロスバーグ(東京都世田谷区)の大山聡代表は「これまで(統合が)うわさになったことがない2社だったため、驚いた」と話す。
リョーサンはNEC系列であるのに対し、菱洋エレクトロは三菱電機の系列に属し、「接点がなかった」(菱洋エレクトロの中村守孝社長)。ただ、顧客層や商材の重複が少ないため、相乗効果が見込めると判断したようだ。
リョーサンの23年3月期連結売上高は3256億円で、菱洋エレクトロの23年1月期連結売上高は1299億円。統合によりマクニカホールディングス(HD)や加賀電子、レスターHDなどのひしめく上位集団に入る見込みだ。
こうした商社再編は今に始まったことではない。15年にはマクニカと富士エレクトロニクスが経営統合し、マクニカ・富士エレHDを設立。また19年にはUKCHDとバイテックHDが統合し、レスターHDが誕生した。
再編の背景としては、商社の仕入れ先である半導体メーカーの存在が大きいと言われる。ある半導体商社の幹部は「代理権がなくなることは、その会社の生死につながる」と影響力の大きさを語る。具体的には、半導体メーカーの直販志向が商社の再編の一因となる。インターネットの普及により、メーカーが最終顧客に接触しやすくなったことで「代理店が必要なくなってきた」(グロスバーグの大山代表)。
さらにメーカー側の合従連衡も商社再編の遠因になりうる。ルネサスエレクトロニクスは、17年に同業の米インターシルを、19年には米IDTを買収。20年以降にルネサスと半導体商社間での特約店契約の解消が進んでおり、直近では23年2月末にRYODEN(旧菱電商事)との販売特約店契約を終了した。
他では、モノ言う株主の存在も商社の再編を促す要因となっている。例えばUKCHDがバイテックHDと統合した際、UKCHDは旧村上ファンドから株を買われていた。直近では、旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンス(東京都渋谷区)がリョーサン株を買い増しているように、モノ言う株主は健在と言える。
半導体や関連品目が経済安全保障上の重要物資と位置付けられている中、調達や流通などを担う半導体商社の存在感はコロナ禍で高まってきた。ただ「サプライヤーとの力関係は何ら変わっていない」(半導体商社首脳)と従来の立場は続く。半導体商社が生き残るための戦略として、M&Aは選択肢の一つになっている。菱洋エレクトロとリョーサンの統合が、業界再編を加速させる可能性もありそうだ。
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