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電動車部品に経営資源投入、ファインシンターが乗り出す事業構造改革の中身

ファインシンターは事業構造改革に乗り出す。経営資源を電動車向け部品に積極投入するほか、鉄道向けなど非自動車分野も強化する。この原資を確保するために、主力だが今後減少するエンジンやトランスミッション(変速機)向け部品は設備の集約化などを進め、生産ロスを低減する。主力事業の改善と将来への投資を同時に進め、刻々と変化する市場環境に対応する。(名古屋・川口拓洋)

ファインシンターの設備投資と研究開発費

「電動化など自動車業界の変革期を発展のチャンスにするべく、収益性を改善し、事業ポートフォリオを変革する」。7日に社長就任後初となる事業説明会をオンラインで実施したファインシンターの山口登士也社長はこう強調した。コア技術である粉末冶金を需要に応じた製品として仕上げ、競争力の最大化を狙う。

中期経営計画の最終年度となる2025年度(26年3月期)までに複数の取り組みを実施。22年度に自動車用部品の売上高の約21%を占めたエンジンや同約14%のトランスミッション向け部品は設備の寄せ止めや整流化を進め、収益力を高める。同約22%のショックアブソーバーなど足回り・ステアリング向け部品では、同社が「未来Factory」と呼ぶデジタル技術の活用を加速。電気自動車(EV)シフトでも引き続き需要が見込めるとして、工程内の自動搬送や予知保全、トレーサビリティー(履歴管理)などを実現し24時間無人稼働ラインを実現する。

田中義人副社長は「コストでは30%、品質面では設備搬送などに伴う不良を6分の1に低減する」と効果を語る。23年度内には春日井工場(愛知県春日井市)での実証を終え、順次グローバル展開する考えだ。寄せ止めや工場のデジタル化などにより約10%の省人化効果も期待する。

これらの取り組みで捻出したリソースは電動車向け部品や非自動車分野に投入。特にハイブリッド車(HV)や燃料電池車(FCV)向けインバーター部品の「リアクトルコア」は数量の増加が期待でき、年間380万台分の生産規模を確保する。次世代のリアクトルの開発も進める。山口社長は「お客さまのニーズを先取りする形で新しい製品を提案したい」と意気込む。

同社は25年度に売上高400億円、営業利益率8%、株主資本利益率(ROE)10%の達成を目指す。次世代領域への投資加速のため、どれだけ既存事業の収益を確保できるかがカギとなりそうだ。

日刊工業新聞 2023年月7月11日

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