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ファインシンター社長・井上洋一氏/HV向け部品生産増強

虎視 勝ち筋探る車部品#09

―トヨタ自動車が2030年の電気自動車(EV)の販売目標を350万台に引き上げました。
 「全てをEVにするのではなくハイブリッド車(HV)なども増やす計画で急激な方向転換とは思わない。ただ電動化は加速する。(HV向けインバーター用部品の)リアクトルコアの生産ラインを増強したい。ゆくゆくはリアクトルの組み立てまで手がけたい」

―自動車生産量の変動が激しい状況が続きます。
 「無人で不良品を圧倒的に減らす工場『未来ファクトリー』のモデルラインを春日井工場(愛知県春日井市)で今夏に本格稼働を目指す。人手不足に柔軟に対応できる。原材料価格の高騰も続く中、不良品を減らして材料コストを抑える」

―30年度に国内で二酸化炭素(CO2)の排出量を13年度比半減する目標です。
 「カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)は社会から求められる課題だ。当社は焼結炉の工夫などで進める。滋賀銀行と締結した(CO2削減目標の達成で金利優遇を受けられる)『サステナビリティ・リンク・ローン』は環境対応に力を入れる意思表示でもある」

―コオロギを使った昆虫食など新規事業で期待する分野は。
 「コオロギフードはペットフードなどでも需要がありそうだ。チタンを使ったアイスクリーム用スプーンは、熱伝導率が低いため冷えすぎず、アイスをおいしく食べられる。商品化へ前進する」

【記者の目/新たな経験でたくましく】
 ファインシンターは自動車部品事業で培った粉末冶金技術を生かし、コオロギを使ったスナック菓子とインスタントラーメンを商品化した。こうした新規事業を軌道に乗せるには、手間も時間もかかるだろう。だが新規事業に取り組むことで得られる知見がある。新たな経験は、自動車業界の変革期を乗り越えるたくましさにつながる。(名古屋・山岸渉)

日刊工業新聞2022年2月15日

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