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三菱電機が事業化目指すプラスチックリサイクル技術の全容

三菱電機は自社の家電に適用していたプラスチックのリサイクル技術について、社外の製品も対象とする。プラスチックの種類ごとの帯電特性の違いを利用して高純度に選別する「静電選別」技術を確立。現在、2024年度の事業化を目指し、他業界の14社から提供を受けたサンプルの評価を進めている。対応できるプラスチックの種類を増やし、多様な業界の廃プラスチック対策に貢献したい考えだ。(編集委員・安藤光恵)

現在、世界で廃棄されるプラスチックは年間2億5000万トンに上る。そのうちリサイクルできているのは、わずか9%だ。そうした中で三菱電機は1998年の家電リサイクル法施行に伴い、子会社のグリーンサイクルシステムズ(千葉市緑区)を設立。2010年にはプラスチックのリサイクル技術を確立した。他の業界ではリサイクルにこれから取り組む会社が多い点に注目し、高度選別装置の販売や導入・活用支援サービスの展開を目指すことにした。

静電選別の仕組み

破砕後のプラスチックを再利用するには高い純度が必要だが、破砕プラスチックは複数種の混合片。さらに同じ種類のプラスチックでも塊やフィルムなどの形状や硬さ、色などの条件の違いが選別を難しくする。そこで三菱電機は静電選別により高純度を実現。先端技術総合研究所(兵庫県尼崎市)の中村保博環境・分析評価技術部専任は「分子構造が近い材料の混合片や光を吸収しやすい黒色のプラスチックなど、他の選別方法では難しい条件にも対応できる」と利点を挙げる。

まず帯電筒と呼ばれる容器に混合片を入れて回転させ、プラスチック同士をこすり合わせて静電気を起こす。次に高い電圧のかかった電極の間に混合片を投入すると、プラスチックの種類ごとに帯びた電気に応じて別々の電極の方向に引き寄せられる仕組みだ。うまく電極に引き寄せられなかった中間物も再投入し、精度を高める。

この手法は帯電状態が変わりやすいため性能の安定性が課題になるが、高い電界を加えやすい独自形状の電極を開発して精度を高めた。また、投入した混合片の組成や季節などの条件の違いに応じた最適な選別条件を導き出す解析技術や操作ノウハウも蓄積。技術を有効活用するため、業界を超えて提供すると決めた。

21年10月以降、約70社からの引き合いがあり、三菱電機は期待を実感している。従来は家電の主要なプラスチック3種類の対応だったが、他業界にも展開するため10種類以上に対応可能になった。現在、シャンプーのような日用品の容器で花王と検証を進めるなど、14社からのサンプルを活用し、多様な条件で帯電の最適化に取り組んでいる。事業化後はユーザーごとに適した選別装置の提供と運用支援を行う構想だ。

将来は、どんな混合比のプラスチック片を投入しても自動で最適に選別できる「スマート選別」を目指す。中村専任は「高度な選別をあらゆる業界に普及したい」と意気込む。


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日刊工業新聞 2023年月7月11日

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