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TSMC進出の熊本で19%上昇も…路線価、コロナ禍回復で商業・観光地上向く

TSMC進出の熊本で19%上昇も…路線価、コロナ禍回復で商業・観光地上向く

路線価の最高額は東京都中央区銀座5丁目の文具店「鳩居堂」前。38年連続で全国1位となった(3日)

国税庁が発表した2023年分(1月1日時点)の路線価によると、標準宅地の路線価(評価基準額)の全国平均値は前年比で1・5%上回り、2年連続で上昇した。コロナ禍からの回復が進み、個人消費の持ち直しやインバウンド(訪日外国人)の需要増加から商業地や観光地などが上昇した。地域別にみると、北海道新幹線の延伸が見込まれる札幌市や、台湾積体電路製造(TSMC)が進出する熊本県菊陽町で上昇傾向が続く。(編集委員・川瀬治)

最高路線価=東京・銀座の「鳩居堂」前

路線価の最高額は東京都中央区銀座5丁目の文具店「鳩居堂」前で、1平方メートル当たり4272万円となり、38年連続で全国1位となった。前年比では1・1%上回り、3年ぶりの上昇となった。

標準宅地の評価基準額の対前年変動率

都道府県別では、標準宅地の路線価が前年に比べて上昇したのは25都道府県と、前年から5都道府県増えた。東京や埼玉、千葉、神奈川といった首都圏や大阪、愛知、福岡など大都市圏のほか、北海道、岩手、福島、広島、佐賀、熊本など全国的に上昇傾向が広がっている。最も上昇したのは北海道で上昇率は6・8%だった。次いで上昇したのは、福岡県で4・5%。宮城県は4・4%上昇となった。コロナ禍からの回復が、全国に波及している傾向が鮮明になった。

一方、路線価が下落したのは青森、栃木、群馬、新潟、山梨、福井、岐阜、三重、和歌山、鳥取、島根、徳島、香川、愛媛、鹿児島など20県となったものの、前年から7県減り、改善傾向にある。下落率が1番大きかったのは和歌山で1・2%下回った。次いで福井が1・0%下落した。愛媛が0・9%下落。群馬、徳島が0・7%下回り、新潟、山梨、香川が0・6%下落。岐阜が0・5%下落した。このほかの11県は、いずれも下落率は0・5%未満だった。

都道府県庁所在地の都市の最高路線価は、29都市が前年を上回った。22年の15都市と比べると約2倍となった。4都市が下回ったものの、22年の16都市から大幅に改善した。横ばいは13都市だった。都道府県庁所在地の都市の最高路線価で、上昇率が1番大きかったのは岡山市北区本町の市役所筋で、9・3%上昇と22年の1・4%上昇から上昇幅が拡大した。岡山市の中心部で再開発が進むなどし上昇している。

次いで、札幌市中央区北5条西3丁目の札幌停車場線通りで8・4%上回り、22年の4・8%上昇から上昇幅が拡大した。北海道新幹線の札幌延伸への期待感から、札幌市の中心部で再開発が加速しているほか、オフィスやマンションの需要増加が上昇要因になっている。

熊本・菊陽町、TSMC進出に沸く 半導体関連企業集積進む

世界的な半導体メーカーの進出が、熊本県全体を押し上げている。熊本県の標準宅地の平均値は2・3%の上昇となった。TSMCが進出し、工場建設が進む菊陽町を所轄する菊池税務署の最高路線価は、菊陽町光の森3丁目の県道住吉熊本線で、19・0%上昇した。TSMCの進出で、半導体関連企業の集積が進み、菊陽町や近隣の自治体が上昇している。今後も、TSMCが熊本県内に第2工場の建設を検討していることなどから、地価の上昇傾向は続くとみられる。

熊本県菊陽町ではTSMC日本工場の建設が進む(4月)

インバウンド需要の本格的な回復が、コロナ禍で打撃を受けた商業地や観光地の路線価を押し上げている。都内では、外国人観光客に人気のある東京「下町」の東京都台東区浅草1丁目の雷門通りが、7・0%上昇した。

関西地区でもインバウンドが増加し、大阪も改善傾向にある。21年、22年と2年連続で下落率が「全国ワースト」だった大阪の繁華街「ミナミ」の大阪市中央区心斎橋筋2丁目が、横ばいとなった。

路線価は、国税庁が土地の価格がおおむね同一と認められる一連の土地が面している路線ごとに、1平方メートル当たりの評価額を算定したもの。相続税や贈与税を計算する際の基準になる。1月1日時点を評価時点として1年間の地価変動を考慮し、国土交通省が土地取引の指標として公表する公示地価の8割を目安に、売買事例や不動産鑑定士の意見などを参考にして国税庁が算出している。標準宅地の評価基準額の対前年変動率の平均値は、約31万6000地点の標準宅地を対象に算出している。

日刊工業新聞 2023年月7月4日

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