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高級石けんメーカーが準自己破産、窮地招いた代表の決断

美容せっけん製造のエスディーシーが2023年2月に、さいたま地裁越谷支部より破産手続き開始決定を受けた。同社は石野栄治氏が1973年6月に設立、休業を経たのち化粧品卸業者の営業支援を受けて97年5月に事業を再開し、98年には石野栄一氏が代表に就任した。

現在流通するせっけんの多くは大量生産される“機械練り”の製法だが、石野氏は独自の製法を確立。同社の透明せっけんは人の手による昔ながらの“枠練り”製法で、肌に良く、洗浄力と保湿力が高い成分を多く配合できるというもの。“枠練り”の透明せっけんを主力に高級洗顔せっけんメーカーとして化粧品専門商社、メーカーなどにOEM(相手先ブランド)生産供給し、国内富裕層や海外向けに販売され、13年12月期には年商2億6800万円を上げていた。

しかし、内情は厳しかった。納入価格が低く収益性に乏しかったほか、金融機関からの借入金も重荷に。また代表個人への数千万円にも及ぶ貸付金が長年にわたり固定化し財務の足かせとなっていた。18年には主力得意先からの受注が大幅に落ち込む事態が発生。かつてエスディーシーが事業を再開するにあたって支援してくれた先だった。ほどなく取引再開を打診されたが、「一度離れた先とは付き合わない」と代表はこの申し出をはねのけた。主力取引先との取引解消は業界内で知れ渡ることとなり、取り引きの見直し、取引解消を検討する先が現れた。金融機関の返済にも支障を来す状況も続き業況悪化が深刻化していった。

こうした中、20年に入り新型コロナ感染拡大で決定的な打撃を受ける。需要先である百貨店の稼働が大幅に縮小したことで、21年12月期は年商4200万円に落ち込み大幅な最終赤字を計上。22年3月で事業を終了することを決意し、債務整理を進めていたが、代表が同年11月に死去。最後は、準自己破産という形で50年の業歴に幕を閉じた。(帝国データバンク情報統括部)

日刊工業新聞 2023年06月29日

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