横領・粉飾で信用失墜…カジュアルウエア卸で注目されたスタートアップの倒産劇
1月末に事業を停止したホープインターナショナルワークスは、コロナ禍前には数々のメディアに登場するなど、注目のスタートアップだった。同社は2010年6月に設立。代表の業界経験で培った人脈を駆使して中国の生産工場と協力関係を構築し、カジュアルウエアの卸を手がけた。デザインの企画から品質管理、アフターフォローまで一貫対応。柔軟な対応が大手商社などから評価され、OEM(相手先ブランド)生産受注を得て業容を拡大。
16年8月には、着古した衣料品をリメークする新事業を立ち上げる。親世代の洋服を斬新(ざんしん)にリメークして子ども世代が着るなど、新たな価値観の創造を生み出すとともに、洋服の廃棄ロス削減をミッションに掲げ、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を推進する事業として注目を浴びた。店舗は全国ネットのテレビ番組で特集を組まれるなど各メディアで取り上げられ、18年5月期には売上高約26億5000万円を計上した。
しかし、間もなく、幹部社員による数千万円単位の横領が発覚し、ガバナンス不全を露呈する。さらに、新型コロナウイルスの影響を受けた大手アパレル業者からのOEM受注が急減。人気を博したリメーク事業も外出自粛の影響を受け、一部店舗は閉鎖に追い込まれた。21年4月には資金繰り悪化から金融機関に返済条件緩和を要請。その後、過年度にわたる粉飾決算が発覚し、築き上げた信用は地に落ちた。
メディアに大々的に取り上げられてからわずか2年後の2021年5月期には、売上高がピークから3割にも満たない約8億円まで落ち込み、2億5000万円以上の営業損失を計上してしまう。
その後は薄利多売からの脱却のため、OEM事業から撤退。リメーク事業での再起を図ったが、拡大期に抱えた10億円近い債務が重荷となり、事業停止を余儀なくされた。(帝国データバンク情報統括部)