「瞬時的学習」と「じわじわ学習」は別モノだった
東北大学の金谷哲平研究員(研究当時)と松井広教授らは27日、訓練中に上達する即時的な学習と、後からじんわり身につく学習は独立した学習過程であると実証したと発表した。どちらもグリア細胞から神経細胞を刺激すると促進された。つまり訓練中の手応えが定着するかどうかは別問題で、薬などで学習機能を向上させるならグリア細胞が介入の糸口になる。
マウスが縞模様を目で追いかける眼球運動で学習効果を検証した。訓練中に成績が上がっていく学習と、1時間後の成績で休憩中の学習効果を比較した。すると人工的にグリア細胞からグルタミン酸が放出されやすい状態を作ると即時的学習の成績が向上した。1時間後の成績は刺激しない場合と統計的有意差がなかった。
人工的にグリア細胞の機能を止めると、即時的学習の成績は下がった。休憩後の成績は止めない場合と有意差がなかった。つまり二つの学習過程は独立している。従来は自然と引き継がれると想定されていた。
これらの学習過程をグリア細胞が制御している。従来は神経回路に栄養などを供給する充填組織の位置づけだった。リハビリや認知症など、記憶や学習に関わる治療法開発につながる。
日刊工業新聞 2023年06月28日