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量子コンピューターが古典スパコン計算手法超え、IBMが初実証

量子コンピューターが古典スパコン計算手法超え、IBMが初実証

IBMの量子コンピューターの本体(実物を再現した模型)

米IBMは15日(米国時間14日)、100超の量子ビット規模において量子コンピューターが「古典」と呼ばれる既存のコンピューターを用いた計算手法を超える正確な結果を導き出せることを初めて実証した。システム内のエラーを学習し軽減することで、量子コンピューターが最先端の古典シミュレーションを凌ぐことを実証した。

量子コンピューターは既存の古典コンピューターでは難しい膨大なデータ分析や時間がかかる難問を効率よく解ける夢の計算機として期待されている。IBMは今回の研究成果について「効率的な肥料の設計、優れた電池の製造、新薬の創出といった課題に取り組むための重要なステップ」としている。成果は科学雑誌「ネイチャー」に掲載された。

 

具体的には、チップ上の127個の超伝導量子ビットで構成されるIBM製の「イーグル」プロセッサーを使用して、物質モデルのスピンのダイナミクスをシミュレートし、その磁化などの特性を正確に予測する、大規模なもつれ状態を生成した。

古典コンピューターと比較してモデリングを検証したところ、量子コンピューターはモデルの規模が大きくなるにつれて、高度なエラー軽減技術を用いて正確な結果を出し続けた。一方、古典コンピューターは最終的に行き詰まり、IBMの量子システムには及ばないという結果になったという。

この実証に基づき、IBMはクラウド上やパートナー拠点のオンサイトで稼働するすべての「IBM・クアンタム・システム」を127量子ビット超の大規模量子プロセッサーに拡張し、量子コンピューターの普及拡大を加速する方針だ。

日刊工業新聞 2023年06月15日

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