ニュースイッチ

アマダが26年3月期売上高4000億円へアクセル、成長のけん引役は?

アマダが26年3月期売上高4000億円へアクセル、成長のけん引役は?

AGICで顧客と共に成長を目指す

アマダは4月に山梨貴昭社長率いる新体制を発足し、2026年3月期に売上高4000億円(23年3月期は3656億円)を目指す3カ年中期経営計画を始動させた。脱炭素や人手不足などの社会課題の解決に貢献する商品群でシェア拡大を図り、31年3月期に売上高5000億円を目標とする長期戦略にも着手する。強みのレーザー技術を応用した新ビジネスの事業化などで、売上高や利益が過去最高となった23年3月期の業績を更新し続ける異次元の成長を描く。

「“現在(いま)”のビジネスを拡大し、“未来(あす)”のビジネスのためにこの3年間で何を仕込んでいくかを計画に盛り込んだ」。山梨社長は中計の狙いをこう表現する。

中計を支えるのは2月に神奈川県伊勢原市の本社に開所した誘客施設「アマダ・グローバルイノベーションセンター(AGIC)」だ。同社は二酸化炭素(CO2)排出量を従来比50%以上削減するレーザー加工機や自動化効果を高めた板金曲げ加工機などを相次ぎ開発。AGICの開所に合わせ主力板金製品129機種のうち80%でこうした新商品を投入して展示した。

AGICでは、環境負荷低減や人手不足など顧客が抱える課題に向き合い、新商品や効果検証などを通じて共に解決策を導くことを目指す。また商品の性能を裏付ける技術的な根拠の解説にも力を入れる。山梨社長は「お客さまは商品に盛り込んだ新たな技術が長く続くのか疑問を持っている。開発の考え方を含めてなぜできるのかを説明して、納得を得られれば信頼が生まれ、次の共創につながる深い会話のきっかけにもなる」と見る。

中計では31年3月期を見据えレーザー技術を応用した新たな事業領域の拡大にも取り組む。山梨社長は電気自動車(EV)用モーターや電池の生産技術を念頭に「銅やアルミニウムのような高反射材に対する光の技術を確立しており、当社の技術を総合すると多くの領域をカバーできる」と見込む。

既にEVモーターではグループ会社の技術も活用し、モーターコアや銅線コイルの加工機を開発。さらにレーザー溶接技術を組み合わせた新領域への参入に乗り出す。また半導体やガラスの加工では同社のレーザー技術を応用した加工機の開発も可能とみており、山梨社長は「光の技術を市場の拡大に使っていきたい」と新ビジネスの確立を見据える。

インタビュー

31年3月期の長期目標を見据えるアマダ。事業戦略などを山梨貴昭社長に聞いた。(西沢亮)

社長・山梨貴昭氏

―AGICでは顧客専用の加工検証スペース「イノベーションラボ」も設けました。
「最新の加工機や検査機器を備え、新素材に対応した加工技術の確立などお客さまが抱える課題を当社の技術陣も交えて解決し、共に成長することを目指す。ただ課題にはお客さまの要望を受けて対応することもあるが、その前に解決につながる要素技術をこちらで備えていなければ共創はできない。市場動向を見据えた要素開発を重視し、引き続き力を入れていく」

―31年3月期に海外売上高で23年3月期比60%増の3300億円を目指します。
「サプライチェーン(供給網)の課題克服のためにも地産地消による即納体制を構築する。日本を主軸に欧米の供給拠点を拡充し、アジアでの工場新設を含めた4極体制を検討する。先進国では自動化装置の供給体制も強化する。アジアではそこまで自動化需要は高くなく、現地にあった商品を開発。現地生産でコスト競争力を高めるが、現地の商品と競合するのではなく、最適な商品を提供して事業を拡大していく」

―人材への投資も積極化します。
「機械業界で最高の給与水準を目指し、基本給を底上げするベースアップ(ベア)を3年連続で実施する。社員には働く意欲を高め、末永く働いてほしい。キャリア採用における競争力も高める。新入社員の初任給も引き上げ、優秀な人材の確保にもつなげる。技術に関する教育にも力を入れて底上げを図り、成長戦略を進める」


【関連記事】 日産が新しいクルマ作りで必ず頼りにする機械メーカー
日刊工業新聞 2023年06月28日

編集部のおすすめ