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「舶用可変圧縮比機構」世界初の実用化、低速エンジン燃費を大幅改善

三井E&SDUが受注
「舶用可変圧縮比機構」世界初の実用化、低速エンジン燃費を大幅改善

大型舶用低速エンジンの燃費を大幅に改善できるVCR機構(イメージ、三井E&SDU提供)

三井E&SDU(兵庫県相生市、匠宏之社長)は、大島造船所(長崎県西海市、平賀英一社長)から大型舶用低速エンジンの燃費を大幅に改善できる可変圧縮比機構(VCR機構)を受注した。国際海運のカーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けて燃料の多様化が進む中、圧縮比を変えてさまざまな燃焼特性に対応できる世界初の大型舶用エンジン向けVCR機構が実用段階に入る。

日本郵船が大島造船所に発注した2隻の大型石炭運搬船に搭載するデュアルフューエルエンジン(二元燃料機関)「6X62DF―2・1」にVCR機構が組み込まれる。同エンジンは液化天然ガス(LNG)燃料に対応。新造船は2025年に竣工する予定だ。

VCR機構はエンジン出力やLNG燃料の性状に応じて最適な圧縮比に調整する。船舶運航時の負荷や使用条件によるが、LNGなどガスモードで約3%、重油などディーゼルモードで約6%の燃費改善効果を見込む。船舶運航時の燃料費を抑えられるほか、二酸化炭素(CO2)削減に大きく貢献する。新造船だけでなく、既存船の性能改善にも利用できる。

一般にエンジンは圧縮比が高いほど燃費が良くなる。従来から圧縮比を可変する効果は周知されているが、構造が複雑になり、開発が困難だった。

三井E&SDUは最新の油圧、シール、潤滑、構造強度、制御などの技術を応用。要素試験を積み重ね、大型舶用低速エンジンのライセンサーであるスイス・ウィンターツールガス&ディーゼルとともに世界初のVCR機構を商用化した。

三井E&SDUは、親会社の三井E&SがIHI原動機(東京都千代田区)から大型舶用エンジン事業を承継する形でグループに入り、4月に事業を開始した。

日刊工業新聞 2023年06月14日

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