訪日外国人に照準、阪神電鉄が高める沿線の魅力
阪神電気鉄道は沿線地域の魅力を高めてインバウンド(訪日外国人)需要を取り込み、鉄道利用者増を図る。神戸市など地元自治体と連携し、酒蔵や六甲山、甲子園といった観光資源のPRやイベント開催により交流人口を増やし、移動を促す。相互乗り入れしている近畿日本鉄道や山陽電気鉄道(神戸市長田区)との利便性も高める。親会社の阪急阪神ホールディングス(HD)は2022-25年度に2900億円を成長投資する。(大阪・市川哲寛)
関西国際空港から大阪に来た外国人に阪神沿線の魅力を発信し、神戸市まで足を延ばしてもらう考え。近鉄や山陽電鉄への直通列車を使えば奈良方面や兵庫県姫路方面にも行きやすい。
阪神沿線は酒蔵が多く、有数の日本酒どころとしての情報発信を強める。また、神戸を芸術エリアに見立てて散策などを促すイベントは開催を増やし、アートに触れる機会を多く設ける。
六甲山は観光地としての魅力を高める。展望台や植物園、音楽施設に加え、リニューアルしたアスレチック施設でスポーツも楽しめる場としてアクティブな利用客を取り込む。
スポーツエンターテインメントでは甲子園球場が24年に開場100年、同球場を本拠地とするプロ野球の阪神タイガースが25年に創設90年の節目を迎えるため積極的にキャンペーンを行う。25年に兵庫県尼崎市に移転するタイガースのファーム施設は脱炭素化など先進性も備える。野球文化を世界に発信するコンテンツに位置付けて国内外からの集客につなげる。
電車の利便性向上では、近鉄との乗り入れで尼崎駅での列車の連結や切り離しの作業回数を減らして同駅での停車時間を短縮し、速達性を高めた。コロナ禍で休止していた近鉄の特急車両の貸し切り旅行企画を復活させるなど、乗り入れ以外の連携も深める。
山陽電鉄も含めて「大きなネットワークを生かして利用者数を伸ばす」(久須勇介社長)として、ダイヤ改正も視野に入れる。
一部私鉄では有料座席指定車の導入や増設が進んでおり、阪神も22年度の臨時列車での実験結果やニーズを分析して定時運行を検討する。実験は「思いのほか好評で驚いた」(同)と捉えるが、コストに見合うニーズがあるのか、全席指定か一部座席指定かといった運行形態などを精査して結論を出す方針。