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日本の技術でウクライナ復興後押し、経産省が事業化調査に補助

日本の技術でウクライナ復興後押し、経産省が事業化調査に補助

G7で来日したゼレンスキー大統領と岸田首相(首相官邸公式サイトより)

経済産業省は日本企業の技術力を活用し、ロシアの侵攻を受けたウクライナの復興を後押しする。海外でのインフラ整備の受注を目指す企業を対象にした支援事業で、ウクライナや周辺国のインフラ補修・高度化に取り組む企業を委託先として採択した。21日に広島で閉幕したG7サミット(先進7カ国首脳会議)開催中にウクライナのゼレンスキー大統領と会談した岸田文雄首相は官民での復興支援に強い意欲を示した。経産省は技術力を持つ日本企業を通じ、復興に貢献する考えだ。

経産省がウクライナの復興などを念頭に推進しているのが「現地社会課題対応型インフラ・システム海外展開支援事業」。海外のインフラ整備の受注に向けた日本企業の都市開発計画策定や事業化調査(FS)を支援する「インフラFS支援事業」の一つとして2022年度補正予算で新設した。調査の実施対象国は問わないが、ウクライナ情勢を踏まえた復興需要案件であるかを審査基準の一つに掲げる。

委託先として合計4件を採択した。オリエンタルコンサルタンツグローバル(東京都新宿区)と駒井ハルテックはロシア侵攻で破壊されたウクライナの橋梁のうち、特に緊急性の高い橋梁の復旧手法として仮設橋による整備を検討し、現地調査を進める。日本工営と日本製鉄はウクライナからモルドバを経由して欧州連合(EU)に至る輸送回廊上に位置する鉄道インフラの修繕・整備計画策定に向けた調査を行う。

岸田首相はG7サミット開催中にゼレンスキー大統領と会談。会談後の会見で「官民一体でウクライナの復旧・復興を力強く後押ししたい」とあらためて強調した。政府内に新設した「ウクライナ経済復興推進準備会議」において、復興に関する具体的な政策の検討を進める。

経産省は現地社会課題対応型インフラ・システム海外展開支援事業において複数のインフラで構成する都市開発などに必要な調査を対象にした委託事業に続き、個別インフラのFSにかかる費用の一部を支援する補助事業の公募も始めた。最大5000万円を補助する。6月2日に締め切り、7月下旬をめどに採択結果を公表する計画だ。

経産省は「復興に関し、ウクライナの日本に対する期待は大きいと受け止めている。事業を通じ、日本企業の取り組みを後押ししたい」(担当者)としている。

日刊工業新聞 2023年05月24日

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