ソニーG・パナソニックHDなど賛同、再エネ加速を求めるメッセージは政府に届いたか
先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合の開催直前、企業225社を含む303者が日本政府に対して再生可能エネルギーの導入加速を求めるメッセージを発信した。「脱炭素化が世界のビジネス取引のルールになった」とし、日本企業が国際的にも正当に評価されるため気候変動対策の強化を訴えた。企業の声は政府に届いたのか。
メッセージは企業や自治体が連携する「気候変動イニシアティブ」が取りまとめ、アサヒグループホールディングス(HD)やセイコーエプソン、積水ハウス、ソニーグループ、パナソニックHD、リコーなどが賛同した。2022年のG7首脳会合(サミット)で合意した「35年までの電力部門の全部、もしくは大部分の脱炭素化」に向け、洋上風力発電の拡大や新築建築物への太陽光パネルの設置義務化を求めた。また、二酸化炭素(CO2)排出量に応じて費用負担するカーボンプライシング(CP)の早期導入も訴えた。
気候変動イニシアティブの加藤茂夫共同代表(前リコー上席執行役員)は会見を開き、「日本政府は世界と若干のズレがある」と指摘。他国と比べ再生エネの普及が遅くて高コストになっているため、企業が思うように再生エネを調達できないと懸念を表明していた。
また、236社が参加する日本気候リーダーズ・パートナーシップも意見書を発表し、再生エネの拡大やCPの早期導入、アンモニア混焼などによる石炭火力発電の脱炭素化について費用や導入時期の検証などを要求。日本が35年までの電力部門の脱炭素化を表明すれば、投資拡大や雇用創出の機会が高まると訴えた。
再生エネ導入加速を/気候変動イニシアティブ共同代表・加藤茂夫氏
G7気候・エネルギー・環境相会合は化石燃料を段階的に廃止することで合意したが、日本の再生エネ導入目標は見劣りしたままだ。会合後、加藤茂夫共同代表に聞いた。
―G7会合前、海外の政府関係者と面会したそうですが、日本の気候変動対策はどのように評価されていましたか。
「ある国の方からは再生エネ資源を豊富に持ち、国内に化石資源がほとんどない日本がなぜ、化石資源に固執するのか不思議だと言われた。違う国の方からは太陽光や風力発電の確立された技術がありながら、実証されていない水素やアンモニア発電の開発に費用を使うことに、経済合理性がないと言われた」
―日本が提唱する水素やアンモニアを活用した発電は、共同声明では「使用を検討している国があることにも留意する」とあり、他の先進国が納得したのか疑問です。
「共同声明を見る限り、完全にお墨付きを得たとは言いがたい。国内の議論ではよいかもしれないが、世界で認められたとは読めず、日本が水素やアンモニアの混焼発電に突き進むことを危惧する」
―会見で日本が世界から遅れていると指摘していました。会合を終え、いかがですか。
「気候変動とエネルギー危機の解決に向け、各国はものすごいスピードとスケールで動いている。会合を終え、あらためて日本も世界と同水準で加速してほしいと思った。21年の電源に占める再生エネ比率は日本が22%(自然エネルギー財団の資料から)、ドイツや英国は40%を超えた。しばらくすると他国は電源の脱炭素化にめどがつく。日本が今の速度と規模ならさらに差が開く。日本企業にとって良くないことだ」
―日本企業への影響は。
「事業で使う電気全量の再生エネ化を目指す国際組織『RE100』に参加する企業の再生エネ比率は米国6割、ドイツ8割、中国3割。対して日本は15%だ。再生エネ100%で生産する企業と、そうではない企業でブランドに差が生じる。再生エネが調達できないという理由で『日本では生産しない』『日本の企業をパートナーに選ばない』ということが起きるかもしれない。世界とのギャップを埋めるため、広島でのサミットに向けても訴え続けたい」
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