中途半端に人間に似た対象は不快。AIも“不気味の谷”感じる
産業技術総合研究所の林隆介主任研究員と、伊賀上卓也リサーチアシスタントは、人間社会のデータを学んだ人工知能(AI)は人間と同様に〝不気味の谷〟を感じることを明らかにした。不気味の谷は、中途半端に人間に似た対象を不快に感じる心理現象。大規模データを学習したAIを通して社会の価値観を抽出したといえる。ロボットやアバター(分身)などの評価に用いていく。
4億枚の画像データとテキストのペアを学習したCLIPというAIモデルで不気味の谷を検証した。人の顔と車などを合成し、5段階の合成比率のデータを5040枚作成した。これをCLIPに評価させ、出力されるテキストから「人間らしさ」や「不気味さ」を定量化した。
すると人の顔と合成対象の中間で魅力が最低、不気味さは最大になった。人間の心理実験ともおおむね一致する。車と靴の合成画像では不気味の谷は現れず、人の顔の変化による現象と確認できた。
人間社会のデータを学ぶことでAIも不気味の谷を感じるようになった。アバターのデザイン評価にAIを用いれば、評価コストをかけられないデザインに生かせる可能性がある。
日刊工業新聞 2023年05月24日