情通機構と米メタ実証…サーバー間時刻同期を無線化、ずれ30ナノ秒に
情報通信研究機構の志賀信泰主任研究員は、データセンターなどのサーバー間時刻同期を無線化し、ずれを30ナノ秒(ナノは10億分の1)に抑える技術を開発した。現行の時刻同期はマイクロ秒(マイクロは100万分の1)レベル。同期精度が上がると分散処理を高速化できる。また無線化で同期ケーブルの保守コストを削減できる。米メタと実証を進める。
標準時を無線端末間で双方向比較して高精度に時刻同期する「WiWi(ワイワイ)」を開発した。無線のため同期ボード1枚で1000台のサーバーを同期できる。データセンターなどを設置する際に同期用ケーブルを取り回さなくて済む。メンテナンス時も不具合のあるケーブルを探す必要がなくなる。新設時と運用時の両方でコストを抑えられる。
現在の同期精度は30ナノ秒。搬送波位相を活用し、時刻はピコ秒(ピコは1兆分の1)レベルでずれない状況を作った。ずれの原因を取り除いて10ピコ秒の同期精度に引き上げる予定。サーバー間の同期精度が上がると、多数のサーバーを同時に動かす分散並列処理の待ち時間を減らし、高速化できるようになる。
さらに多数の端末をピコ秒で同期できると端末位置の測位精度がミリメートルレベルになる。メタの仮想現実(VR)機器の計測や端末ごとの遅延時間を正確に把握できる。すると遅延を装着者が感じないように制御可能。まずはデータセンターで技術を実証し、メタバース向けのVR機器などに展開していく。
日刊工業新聞 2023年月5月23日