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NICTが研究開発、街を見守る「映像IoT」の最先端

IoTはInternet of Thingsの略で「モノのインターネット」と訳されている。IoTの発達により、コンピューター以外のさまざまな「モノ」がネットワークにつながり、データや情報を収集・交換することで、あらゆるモノが有機的に機能する社会の実現が期待されている。映像IoTとはIPネットワークカメラや全方位カメラなど、さまざまな映像センサーによるIoTだ。

情報通信研究機構(NICT)では、映像IoT技術を活用した「鳥の目」「虫の目」「魚の目」による都市空間見守り、特に災害の早期発見・早期対応技術開発を進めている。

鳥の目は映像IoTシステムを山頂やタワーに設置することで、高所から街を見守る。パン・チルト機能を活用することでカメラは定常的に街全体をスキャンし、20Kを超える超高解像度画像により河川増水や火災発生を検出する。災害発生時にはズーム機能による詳細画像取得や災害変化追跡を行う。虫の目は街中に多数設置できる安価な小型カメラだ。個人情報保護に配慮した画像処理によりin situ(その場)の災害状況をいち早く伝えられる。魚の目は、人や飛行ロボット(ドローン)、ロボットが移動しながら発災現場に接近し、現地映像を伝送する可動型映像伝送システムである。

これらの技術の基盤となるのはLTE/4Gや第5世代通信(5G)などのモバイル通信に特化した独自開発のデータ伝送プロトコル群だ。映像伝送やデータファイル伝送を低遅延で高速・高品質に実現することで、これまでは難しかった街全体の映像の即時解析が可能となった。

また、映像IoT技術を時空間データ地理情報システム(GIS)プラットフォームと連携することで、高度な都市空間見守りが可能となりつつある。鳥の目・虫の目・魚の目画像をGISにオーバーレイすることで、災害がいつ、どこで発生したのかを瞬時に確認できる。さらに近隣の高齢者施設、土砂災害危険地域などの関連情報も連動して取得することで、効果的な災害対策決定に寄与する。

IoT技術で重要な要素の一つが低コスト化だ。高額な映像センサーでは自治体に鳥の目・虫の目・魚の目カメラを隈なく配置することはできない。COTS品(民生品)を活用し、データ通信技術や画像処理技術を組み込むことで「映像IoT技術が街を見守る」ことが可能となる。

ネットワーク研究所・レジリエントICT研究センター 研究統括 村田健史

京都大学大学院工学研究科 博士後期課修了。2008年にNICT入所。専門は大規模可視化技術、高速データ通信技術、映像伝送技術およびIoT技術とその融合による国際連携、地域連携。博士(工学)。

日刊工業新聞2022年8月9日

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