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環境・人に優しく…文化シヤッターが転換進めるドア「接着工法」の貢献

環境・人に優しく…文化シヤッターが転換進めるドア「接着工法」の貢献

接着工法によるスチールドア製造は、環境負荷が少なく組み立て時間が短いのが特徴。従来の溶接よりも消費電力が抑えられ、CO2削減につながる

2022年、公共建築工事で使用する材料や工法について定めた「公共建築物標準仕様書」が改定され、スチールドアの製造法に「接着工法」が追記された。文化シヤッターは環境に優しい同工法への切り替えを推進する。

接着工法は接着剤を用いる工法で、スチールドアの組み立て時間が従来より60分短い15分で済む。溶接をしないことで消費電力が抑えられ、ドア1枚当たり5キログラムの二酸化炭素(CO2)を削減できる。同社では、工法の切り替えが進んだ23年度には年間180トンのCO2を削減できると試算する。

階段室で使用されるスチールドア

ビルの階段室などに用いられる重量スチールドアは強度が必要なため、溶接による組み立てが中心だった。しかし、溶接は溶接ヒューム(微粒子)や一酸化炭素を発生させることもある。また「スチールドアを製造する会社は200社前後ある」(上田徹ドア事業部長)が、職人が不足するなど課題も多い。

同社は独自基準で接着工法のドアを製造していた。業界全体で効率の良い製造方法への転換が求められているため、「工法を国に認めてもらう活動を始めた」(同)。自社で積み上げたデータや試験結果を基に、工法の違いによる耐久性の差がないことを示した。そのほかにも、同社の工場に国土交通省の担当者を招き、工法別の製造効率や労働環境の違いを見せて理解を深めてもらった。

焦点の一つに、製造に必要な設備の問題があった。同社が使用していたウレタン系の接着剤では、熱と圧力を加えるために数千万円のプレス機が必要。設備投資が高額になるため「全国どこでもできるようにする」(同)必要があった。接着剤メーカーや業界団体と接着剤を選定。常温で硬化するアクリル系接着剤の使用を推奨することで、新たな設備導入を不要にした。

「接着剤の分、材料コストは上がる」(西井守ドア事業部顧問)とみられているが、消費電力の低減によってカバーできる。そのほかにも労働環境の改善、人手不足解消につながるなど利点が多い。「接着工法を使う会社が増えれば、接着剤の価格も下がる」(同)と見る。人にも環境にも優しい工法へと業界全体で切り替えを進め、スチールドア業界全体を活性化させる。

日刊工業新聞 2023年03月21日

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