新工場に800億円、ディスコが半導体装置の生産能力を一気に拡大する
ディスコは今後10年間で半導体や電子部品材料を切断・研削する製造装置の生産能力を現状比約3倍に引き上げる。広島県呉市で計画する新工場に総額800億円規模を投資し、需要動向をにらみながら3期程度に分けて順次増強する考え。電気自動車(EV)や電力機器向けに市場が広がるパワー半導体の投資拡大を背景に、同社の既存工場はフル稼働が続く。人手不足など課題はあるが、持続的な成長を見据えて生産能力を一気に拡大する。
ディスコはウエハーを半導体チップに切り分ける「ダイサー」や薄く削る「グラインダー」で世界シェア首位の7―8割を握る。足元では売上高の25%前後を占めるパワー半導体向けが好調。炭化ケイ素(SiC)ウエハーをレーザーで効率的に切り出す装置など新分野の需要拡大も期待できる。
同社は広島県呉市の総合スポーツセンターの売却をめぐり優先交渉権を得ており、呉市と立地協定を結んだ。交渉が順調に進んだ場合、年内に売買契約を締結し、その後着工する計画。
新工場の敷地面積は約24万平方メートルで近郊にある主力拠点の桑畑工場の約2倍に相当する。桑畑工場には約1600人の従業員が勤務しており、新工場建設で3000人程度の雇用が新たに生まれる可能性が高い。地元採用だけでは足りないため一部は全国から募るとみられる。
ディスコは2025年度をめどに長野県でも2カ所目となる新工場建設を検討しており、長野事業所・茅野工場(長野県茅野市)近くに土地を取得する予定。
国内では半導体人材の争奪が激しさを増す。優秀な人材を確保するため、ディスコは22年7月に正社員や契約社員などを対象にベアを実施。基本給を一律2万円引き上げた。
4月には自己評価に基づいてベアを決める「コミット手当」の新設も発表。将来にわたり活躍できると自ら宣言した社員に対し、月の基本給に10万円を上乗せする。同じ業績の場合、残業代や賞与を算出するベースとなる金額が増え、対象社員の年収は直近業績に基づく試算で約235万円増える。「モチベーションアップと、それを維持するための責任ある仕事を促す」(同社)考えだ。
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