ニュースイッチ

SDGs債発行の拡大が止まらない、今年度6兆円超の見込み

環境・社会課題解決を目的に発行するSDGs(国連の持続可能な開発目標)債の発行市場が拡大している。SMBC日興証券調べで2022年度の国内発行体による円建てSDGs債市場は、前年度比55%増の4兆5910億円となった。種類が多様化し、従来のグリーンボンド(環境債)以外の各種債券が発行額を押し上げている。23年度もこの勢いは続き、6兆円を超える市場規模が見込まれている。(編集委員・川口哲郎)

22年度は国内公募社債の発行額が前年度比12・3%減の12兆8526億円と、起債環境の悪化により資金調達は減少した一方で、サステナブルファイナンスの活用が進んだ形だ。債券市場全体に対するSDGs債の割合は21年度の10%から22年度は約20%まで増加した。

SMBC日興証券サステナブル・ソリューション部の菊地正人ディレクターはSDGs債発行が伸びている背景について、「プロダクトの多様化」を挙げる。内訳をみると、環境債が同1・3%増の1兆1577億円と微増にとどまる一方で、社会課題解決に使途を特定したソーシャルボンドが47%増の1兆8961億円と伸長した。

さらにサステナビリティボンドが同2倍の7590億円、サステナビリティ・リンク・ボンド(SLB)が同3・4倍の3720億円、トランジションボンドが同6・1倍の3062億円と伸びが著しい。特に、事前に定めた環境目標の達成可否により条件が変化するSLBの存在感が高まっている。調達規模の大型化に加え、自治体の発行も出てきた。「ファイナンスを通じてESG(環境・社会・企業統治)の取り組みをアピールしたい意向がある中で、資金使途が限定されないSLBに需要が集まった」(菊池ディレクター)とみられる。

SMBC日興証券は23年度のSDGs債発行市場を6―6・5兆円規模と見込む。22年度実績比1・3―1・4倍と高い伸びが続く見立てだ。大きなプラス材料は、政府関係機関や特殊法人等が発行し、政府が元金と利息の支払いを保証する政府保証債だ。日本高速道路保有・債務返済機構がソーシャルボンドを初めて発行し、政府保証債は22年度に3800億円の発行があった。23年度はさらに1兆円以上が積み上がる見通しだ。

地方債も22年度発行額が21年度比約1・5倍の2841億円と拡大しており、引き続き伸びが見込まれる。SDGs債は通常の債券に比べてコスト面の優位性が出る、グリーニアムと呼ばれる現象があり、自治体の選択を後押ししている。例えば、広島県が2月に年限10年、50億円で通常の債券と環境債を発行したところ、需要倍率は地方債1・2倍に対して環境債4・2倍と、同じ条件でも如実に差が出た。

SLBが環境省の補助金支援対象に追加されるなど、政策面の後押しも大きい。10年間で150兆円規模のグリーン・トランスフォーメーション(GX)投資に向けたGX経済移行債も23年度は1・6兆円規模が見込まれ、SDGs債市場への影響が注視される。

日刊工業新聞 2023年04月07日

編集部のおすすめ